自己破産

Q. 一昨年、勤めていた会社が倒産してしまい、求職しているのですが、再就職先が見つからず、現在も無職です。
この間の生活費は貯金と妻のパート収入でまかなってきましたが、昨年からは貯金も無くなり、生活費の不足を補うため消費者金融数社から借り入れするようになり、現在負債合計が約300万円あります。毎月の返済額は10万円を超え、その他住宅ローンの支払いも6万円ほどあります。
資産は住宅ローンの担保が付いた自宅、生命保険、中古乗用車1台があります。
A. あなたの場合、無職無収入であり、支払不能と認められますので、破産手続開始原因があります。現在の状況では、自己破産を申し立てることをお勧めします。破産手続の後に免責決定を受ければ、あなたは債務について責任を免れることができます。

  自己破産手続は、あなたの居住する地域の地方裁判所に破産手続開始の申立てをすることから始まります。申立てはあなた自身ですることもできますが、できれば弁護士など法律専門家に手続を依頼したほうが間違いないでしょう。弁護士に依頼する費用は通常のケースでは約30万円程度かかりますので、親族、友人など費用を援助してくれる人を見つける必要があります。

   費用を調達するのは容易ではないでしょうが、弁護士が申立代理人になれば、手続を依頼した直後から、債権者の督促を直接受けることがなくなり、平穏な生活を取り戻すことができます。

  問題は、裁判所に納める予納金の額とあなたの財産がどうなるかです。あなたに一定額以下の財産しかなければ、これらの財産は手元に残すことができ、破産手続開始決定とともに、破産手続は終了します(これを「同時廃止事件」と言います)。この場合、裁判所に納める費用はだいたい2万円以内で済みます。

  しかし、一定額以上の財産があると、この財産を現金に換価して債権者に配当する必要が出てくるので、裁判所は申立代理人とは別の弁護士を破産管財人として選任し、このような業務をさせることになります(これを「管財事件」といいます。)。管財事件では、破産管財人の報酬を確保しておく必要があるので、裁判所に納める予納金は最低でも20万円程度かかります。

   同時廃止事件となるか、管財事件となるかの基準は裁判所によって異なり、申立てをする裁判所に確認する必要があります。現在、旭川地裁では、不動産は別として個別の資産ごとに評価額が20万円を超える資産がない場合は同時廃止が可能であるとする運用をしています。個別の資産とは、現金、預貯金、保険解約返戻金、敷金、貸金、退職金見込額、自動車、動産などを言い、これらの評価額がそれぞれ20万円を超えないことが必要という意味です(但し、退職金見込額はその8分の1が20万円以下であればよい。)。

   現金を除くこれら資産が一つでも20万円を超える場合は、原則として管財事件となり、破産管財人は原則としてその資産を換価して税金の支払いや一般債権者への配当に回すことになります(事情によっては、20万円を超えても「自由財産の拡張」と言って換価・配当しないで済むこともあります。)。現金の場合は、平成16年の破産法改正で99万円まで手元に残しておくことが可能になりましたので、20万円を超えていても、99万円以下ならば配当に回さなくて済みます。

   不動産については、抵当権など担保権が付いている場合、多くの裁判所では、その被担保債権が不動産の評価額のおよそ1.5倍以上であれば、同時廃止事件とする運用がなされています。

   あなたの場合、不動産、生命保険解約返戻金、自動車という資産があるので、旭川地裁に申立てをするのであれば、先ほど説明した基準を参考に同時廃止事件となるか管財事件になるか検討してください。

  自己破産を申し立てるには申立書を作成するほか、陳述書、家計状況報告書、資産目録、債権者一覧表など様々な書類を添付する必要があります。これら書類を提出した後は、破産手続開始原因等を審理するため債務者審尋と呼ばれる裁判官との面接がありますが、同時廃止事件では審尋を省略する運用をしている裁判所が多いようです。

   免責手続は破産手続とは別個の手続ですが、自己破産手続開始の申立てがあった場合には、同時に免責許可の申立もしたものとみなされ、裁判所において免責を許可するか否か判断することになりますが、詳細は「自己破産(免責手続)」をご覧下さい。

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