自己破産(免責手続き)

Q. 私は消費者金融数社から合計約400万円の借金があります。恥ずかしい話ですが、この借入金のほとんどは競馬やパチンコのために借入れしたものです。給料は手取り16万円程度であり、昨年離婚した妻に子供の養育費として毎月3万円送金していました。しかし、消費者金融への返済で生活が苦しくなってから養育費を送っていません。与信枠いっぱいまで借入れしてるため、もう、消費者金融から融資を受けることができず、切羽詰まって、「多重債務者でも融資OK」という広告を見て電話したところ、指定された家電製品をクレジットカードで購入して送れば送金すると言われ、指示通りにしましたが、送金されず、結局騙されたことに気付きました。

  私のようなケースでも自己破産すれば債務が免除されるのでしょうか
A. 自己破産については前回に検討しましたので、今回は免責手続について検討します。
  破産すれば債務が免除されると思われがちですが、必ずしもそうではありません。あなたのようにギャンブルに使うために借入れしたり、換金目的で商品を購入した場合、免責不許可事由に該当し、裁判所が免責不許可にする場合があります。

  このように破産した人の債務を裁判所が免除するかどうかを審査する手続が免責手続と言われるもので、破産手続とは別個の手続です。ただ、破産手続開始の申立てをした場合には、明示の申立てがなくても破産手続開始の申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなされますので、両制度は密接な関係にあると言えます。

  免責許可申立てがあると、裁判所は免責を許可するかどうかについて調査します。裁判所は免責審尋期日を指定し、破産者を裁判所に呼び出して説明を求めることもありますし、そのような期日を指定しない場合もあります。免責不許可事由に該当する事実が顕著であれば破産管財人を選任して、破産管財人に免責調査をさせることもあります。破産者は裁判所対し説明を拒否したり、虚偽の説明をすると処罰されます。

 裁判所は債権者からも意見を聞いた上で、免責不許可事由の有無を審理して、免責の許否を判断します。免責は、免責不許可事由がない限り、必ず許可されます。免責不許可事由としては、財産の隠匿・損壊・不利益な処分、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと、浪費・賭博、債権者を騙した借入、免責許可申立前7年以内に免責許可を取得していたことなどです。

あなたの場合、競馬・パチンコのための借入は賭博行為に、クレジットカードで家電製品を購入して業者に送り、換金しようとしたことは信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分した行為に該当するので、免責不許可事由があるのです。

しかし、免責不許可事由が認められるケースでも、事情によっては裁判所の裁量によって免責が許可される場合があります(裁量免責)。ここでは、免責不許可事由に該当する事実の内容・程度、破産者が無計画な借入等借金を増加させたことを真摯に反省しているか、経済的再生に向けて努力しているか、破産手続に協力しているかなどが総合考慮されます。

あなたの場合、借入のほとんどがギャンブルに使われ、また、悪質業者に騙されたとはいえ、購入した商品を対価なくして処分してしまったことから、裁量免責の獲得は不可能ではないものの、相当厳しいと思われます。

 免責許可決定が確定すると、破産者は原則として、債権者に対する債務の全部について責任を免れます。しかし、一部の債権は非免責債権とされ、免責の効果は及びません。非免責債権は、租税・罰金、破産者が悪意により加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、破産者の故意・重過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、扶養料や婚姻費用分担の請求権などです。

  離婚した妻に対する養育費の支払義務は扶養料として免責の効果が及びません。従って、あなたは免責決定を受けても養育費を払わなければなりません。

 破産手続の開始により、破産者に対しては様々な資格制限がなされます。例えば、弁護士、税理士、会社の取締役、証券会社の外務員、生命保険募集人、損害保険代理店、警備員などにはなれません。しかし、免責許可決定の確定、破産手続開始決定後10年の経過などにより、破産者は復権し、資格制限を免れます。

▲ ページTOPへ