個人再生手続(4)〜住宅資金特別条項

Q.私は手取り年収600万円,妻と子ども2人がいるサラリーマンですが,サラ金から500万円の借入があるほか,残債務1800万円の住宅 ローン(残返済期間20年,自宅に銀行の抵当権設定)があります。
個人再生手続を利用したいのですが。
A.まず,あなたの場合,給与所得者等再生を利用することを検討するとよいでしょう。給与所得者等再生については別に解説していますので,そちらを参照してください。

 さて,あなたの場合,さらに住宅資金特別条項という特則の適用が可能かもしれません。住宅資金特別条項とは,住宅ローンを抱えて経済的破綻に至った債務者が,担保権の実行によって住宅を失うことなく再生できるようにするため,再生計画に住宅ローンの返済の繰り延べを内容とする特別条項を定めることができるというものです。

住宅資金特別条項については以下の3つの類型が法定されています。 @再生計画認可決定確定時までに弁済期が到来した元本,利息等については再生計画による一般の再生債権の弁済期間(最長5年)内に支払い,再生計画認可決定確定後に弁済期が到来するものについては元の住宅ローン契約の約定に従って支払うもの(期限の利益回復型)。

A@による再生計画の見込みがない場合には,住宅ローン契約の最終弁済期から10年を超えず,かつ変更後の最終弁済期における債務者の年齢が70歳を超えない期間,支払いを延長することができるというリスケジュールを行うもの(リスケジュール型)。

BAによる再生計画の見込みもない場合には,?Aのリスケジュールとともに,一般の再生債権の弁済期間内は住宅貸付債権の元本の支払額を少なくするもの(元本の一部の支払猶予型)。

 もっとも,住宅資金貸付債権者の同意があれば,約定弁済期から10年を超えて住宅ローンの期限を猶予するなど?@から?Bまでの類型と異なる内容の住宅資金特別条項を定めることもできます。

 再生計画に住宅資金特別条項を定めることができるのは,住宅ローンが「住宅資金貸付債権」(民事再生法196条3号)であり,これを担保する抵当権の目的となっている住居が「住宅」(同条1号)に該当する場合です。

 「住宅資金貸付債権」は
@債務者の住宅の建設,購入,改良(増改築)に   必要な資金の貸付によって生じた債権であり,
A分割弁済の約定があり,
B@の貸付債権またはその保証をした保証会社,信用保証協会などの債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものに限ります。

 「住宅」とは,債務者が所有し,住居に使用している建物を言います。夫婦の共有の場合でもよいし,建物の一部を店舗としている場合でも床面積の2分の1以上を住居として使用していれば「住宅」にあたります。

以下の場合には,住宅資金特別条項を定めることができないので注意が必要です。
@「住宅資金貸付債権」を有する債権者が「住宅資金貸付債権」を民法500条の規定によって取得した場合。
 例えば,「住宅資金貸付債権」について個人保証している者が債務者に代わって代位弁済した場合,その保証人は債務者に求償できる範囲内で「住宅資金貸付債権」及び「住宅資金貸付債権」を担保する抵当権を取得し,行使しうることになります。この場合,住宅資金特別条項を定めることはできません。

A「住宅」に「住宅資金貸付債権」を担保する抵当権以外に,一般債権を担保する別除権が設定されている場合。
 例えば,事業資金を借入れるにあたり,銀行が「住宅」に抵当権を設定している場合などです。

 このほかにも,住宅資金特別条項を定めることができない場合もありますので,専門家に相談したほうがよいでしょう。

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