楽典 2


 音名(おんめい) その2

メダカ : 若芽先生、今日は音名の2回目です。前回は白鍵の音名をやりましたが、今日は黒鍵ですね。

若 芽 : うん。前回やった白鍵の音は幹音(かんおん)といって音名の基本となる音だ。今回は#や♭で変化した派生音(はせいおん)をやる。派生音は微妙に黒鍵の音とは違う。

メダカ : え? 黒鍵の音の名前じゃないんですか? 幹音に派生音なんて言葉まで出てきて、いきなり難しいじゃないですか。

若 芽 : そんなのはただの名前だから、どうでもいいんだ。テストする訳じゃないし。ただ、黒鍵の音名だけだと思われると困るので、一応言っただけだ。

メダカ : どう違うんです?

若 芽 : メダカ、#の意味は? 

メダカ : えっと、半音上がる、です。

若 芽 : その通り。半音ってのは? 

メダカ : え? 半音は半音でしょう。全音(ぜんおん)の半分ですよ。

若 芽 : 全音ってのは? 

メダカ : 半音の倍です。

若 芽 : なるほどね。全音は半音の倍で、半音は全音の半分ってことね。すごくよくわかる説明だなあ。

メダカ : もう! わかりました、言いなおします。ドとレの間は全音で、半音はその半分です。ドとド#とかド#とレみたいな。

若 芽 : じゃあ、ミとファは? 

メダカ : ミとファは、半音に決まってるじゃないですか。

若 芽 : どうして決まってるんだ? 

メダカ : だって、ドとレの間には黒鍵があるけど、ミとファや、シとドの間には黒鍵がないでしょう? だからミとファは半音なんです。

若 芽 : そりゃあ、そうだけどさ。もうちょっとアカデミックに、半音とはオクターブの12分の1の音程です、くらい言えないかな。(平均律の場合)

メダカ : 変なの。心配しなくても、ここを読んでいる方たちは半音くらい知ってますよ。

若 芽 : それもそうだな。それに、話がずれてしまった。若芽が言いたかったのは、黒鍵と派生音は違うってことだ。

メダカ : ああ、さっきそう言ってましたね。で、どう違うんですか? 

若 芽 : ドレミに#や♭をつけると、いつも黒鍵になるだろうか。

メダカ : ドは半音上がればド#だし、レもレ#になりますから黒鍵ですけど、ミにはファとの間に黒鍵はありませんから、半音上がるとファになります。

若 芽 : メダカ、ミ#はいくらファの鍵盤を弾くからって、ファじゃなくてミ#だぞ。

メダカ : え? ファじゃダメなんですか? ミ#と言ってもファと言っても弾く鍵盤は同じでしょう? 

若 芽 : 弾く鍵盤が同じでも音の名前は違う。ファは幹音だけど、ミ#は派生音なんだ。

メダカ : はあ? 

若 芽 : これは楽典の問題だから、楽譜を中心に考えなければいけない。鍵盤のことだけを考えてしまうと訳がわからなくなるぞ。

メダカ : 楽譜についての勉強なんですね。

若 芽 : うん。しかし鍵盤のことも大事だから、初めに少し整理しておこう。ド#とレ♭は同じ鍵盤を弾くだろ? 

メダカ : はい。どっちもドとレの間の黒鍵を弾きます。

若 芽 : そういうのを「異名同音(いめいどうおん)」という。

メダカ : 名前は違うけど同じ音ってことですね。

若 芽 : そうだ。音の高さだけわかればいいなら、「異名同音」なんていらないだろ? 一つの名前にしてしまえばいい。でも、どういう訳か、そうはならなかったので、名前が音に比べて多くなってしまったんだ。

メダカ : 一つの音に2つずつ名前がつけば、確かに多くなりますね。

若 芽 : 一つの音に2つ、とは限らないぞ。

メダカ : ええ? 3つもあるんですか? 

若 芽 : 4つあるのもあるかな。

メダカ : げっ! 

若 芽 : ダブルシャープとかダブルフラットっていうのがあるからな。

メダカ : なんですか? それは。

若 芽 : まあ、それはそのうちに勉強しよう。まずは#と♭の付く音名からな。

メダカ : わかりました。では、先生。お願いします。

若 芽 : イタリアやフランス、アメリカでは、幹音に#や♭をつけて呼ぶだけらしい。

メダカ : では、ドシャープ、レフラット、って感じですか?

若 芽 : 若芽もずっとそう呼んでいたけどな。よく考えるとシャープとフラットは英語だから、イタリアではシャープとは呼ばないようだ。(イタリア語では、#をdiesis(ディエジス)♭をbemolle(ベモレ)と呼ぶ。ド#は、Do diesis[ド ディエジス]となる。)

メダカ : ああ、シャープってそういえば、英語ですもんね。じゃあアメリカでは、ド#はC#(シィーシャープ)ですね? 

若 芽 : そうだ。で、イタリアやフランス、アメリカの呼び方の説明はそんなところにして、今日は、これからの楽典で必要な日本音名とドイツ音名の勉強をしようと思う。

メダカ : はい。

若 芽 : 日本音名の幹音を言ってみなさい。

メダカ : ハニホヘトイロハです。

若 芽 : よろしい。(忘れた人は楽典1を復習すること)で、派生音だが、#は今の幹音に、「嬰(えい)」を付けて呼ぶ。「嬰ハ(えいは)」「嬰ニ」「嬰ホ」となる。

メダカ : 「嬰ハ」ってのがド#のことですね。「嬰ニ」がレ#。

若 芽 : そう。で、フラットは「変(へん)」を付ける。「変ハ(へんは)」「変ロ」「変イ」だな。

メダカ : 「変」なんて、変なの。

若 芽 : そう言うと思った。

メダカ : だって変ですよ。まあ、「嬰」だって充分変ですよね。普段、こんな字見たことないし。

若 芽 : 「変ロ」の説明はしなくていいのか? 

メダカ : あ、すっかり忘れてました。「変ロ」はシ♭ですね。「変イ」はラ♭。

若 芽 : では、次、ドイツ音名な。

メダカ : え? 日本音名はそれだけですか? 

若 芽 : そうだよ。簡単だろ? 

メダカ : 簡単というか、呆気ないというか…。

若 芽 : メダカ、ぶつぶつ言っていないで、ドイツ音名の幹音は? 

メダカ : あ、先生。なんかずいぶん長くなってしまいましたから、今日はここまでという事で、ドイツ音名は次回にしましょう。

若 芽 : あん? もしかして、メダカ、ドイツ音名を忘れたんじゃ…。

メダカ : では、皆さん。また来週。

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