ピアノのレッスン室 12


 ペダル その2 (ペダルのしくみ その2)

メダカ : 皆さん、こんにちは。今日はペダルの2回目です。では、早速勉強に入りましょう。

若 芽 : 前回のダンパーペダルの説明はわかったかな?

メダカ : はい。バッチリです。今日は残りの2本のペダルのしくみについてですね。

若 芽 : そうだ。まず、弱音ペダルとかソフトペダルとか呼ばれている左のペダルについて説明しよう。

メダカ : 左のペダルを踏むと、なぜ音が弱くなるんでしょうか。

若 芽 : グランドピアノとアップライトピアノでは、音が弱くなる仕組みが違っている。

メダカ : 仕組みが違う? 

若 芽 : うん。メダカ、そこにあるグランドピアノの、左のペダルを踏んでみなさい。

メダカ : こうですか?

若 芽 : 何か気づいたことは?

メダカ : えっと、今、鍵盤が動いたような……。

若 芽 : そう。踏むと、鍵盤全体が右のほうに1、2ミリずれる。離すと元に戻る。鍵盤だけじゃなく、ハンマーも同じだけずれるようになっているんだ。

メダカ : どうしてですか?

若 芽 : ピアノは、どうやって鳴るのか知ってるよな?

メダカ : ハンマーが弦を叩くんです。

若 芽 : その通り。ピアノの中を覗いてみると、高音部と中音部には3本、低音部には1本か2本の弦が張ってあるのがわかるだろ? 1本弦と3本弦ではもちろん状態は違うが、取りあえず、いちばんわかりやすいと思われる3本弦で説明しよう。

メダカ : はい。お願いします。

若 芽 : 左のペダルを踏まない普通の状態では、当然のことだが、ハンマーは3本の弦に当たる。それが、左のペダルを踏むことで、ハンマーが僅かに右にずれて、2本の弦にしか当たらなくなるんだ。

メダカ : ああ、なるほど。つまり、普通の状態では3本の弦が鳴るけれど、弱音ペダルを踏むと、2本しか鳴らない、ということですね。

若 芽 : その通り。なかなか冴えてるな。

メダカ : いや、まあ、そのくらいは、わかって当たり前じゃないかと……。

若 芽 : そうか?

メダカ : はあ。とにかく、3本の弦が鳴る時より、2本の弦が鳴る時のほうが音が弱くなる、ということですね?

若 芽 : そうだ。

メダカ : では、次にアップライトピアノの説明をお願いします。

若 芽 : アップライトは、弱音ペダルを踏むと、ハンマーの位置が弦に近づく。

メダカ : え?

若 芽 : だから、ハンマー全体が弦のほうへ動くわけだ。意味がわからない人は、アップライトピアノの上の蓋を開けて覗いてみるように。

メダカ : ああ、なるほど。ハンマーと弦の距離が近くなるので、離れた位置から叩く時より音が弱くなるわけですね。

若 芽 : そういうことだ。さて、グランドとアップライトではこの構造の違いで、もう一つ大事なことがある。

メダカ : なんでしょう。

若 芽 : グランドの弱音ペダルを踏むと,ちょっと音色が変わるだろ?

メダカ : ええ、なんか、篭ったような感じになるというか…。

若 芽 : メダカ、せめて、柔らかい音になる、とか言ったらどうだ。

メダカ : すみません。

若 芽 : まあ、とにかく音色が変わる。これはグランドピアノだけで、アップライトではそんなことはない。

メダカ : え? どうしてですか?

若 芽 : 弦を叩くとハンマーに弦の痕が付く。これを弦溝と言うんだが、3本の弦を叩くハンマーには3本の弦溝ができる。グランドの場合、弱音ペダルを踏むとハンマーに当たる弦は3本から2本に減るが、ずれるのは弦溝1本分じゃない。

メダカ : というと、弦溝じゃないところが弦に当たるわけですか?

若 芽 : そうだ。弦溝は硬くなっているが、それ以外の部分は柔らかいままだ。だから、弦溝以外のところで弦を叩くと柔らかい音がするわけだ。

メダカ : ほう、なるほど。あ、わかりました。アップライトは、ハンマーがグランドのようにずれないので、音は弱くなるだけで音色は変わらないわけですね。

若 芽 : その通り。やっぱりメダカ、今日は冴えてるぞ。

メダカ : はあ、ありがとうございます。

若 芽 : じゃあ、ペダルの話はこれで終わり。

メダカ : あ、先生、真ん中のペダルのことを忘れてますが。

若 芽 : ああ、ソステヌートペダルのことか……。

メダカ : それです。それってどんなものなんですか?

若 芽 : 真ん中のペダルは、グランドペダルとアップライトでは、全然機能が違っている。グランドの真ん中のペダルはソステヌートペダルと呼ばれていて、ピアノができた頃にはなかったペダルだ。鍵盤を押している時にこのペダルを踏むと、押していた鍵盤のダンパーだけが上がったままになるんだ。

メダカ : よくわからないなあ。

若 芽 : たとえば、真ん中のドミソを弾いたままで、ソステヌートペダルを踏む。それから手を鍵盤から離すと、ドミソは鳴ったままになる。

メダカ : それって、ダンパーペダルと同じじゃないですか。

若 芽 : ダンパーペダルを踏むとすべてのダンパーが上がるから、他の音を弾くと、鍵盤から手を離しても音は響き続けるだろ? だが、ソステヌートペダルの場合、この3つの音以外は、離鍵すると音も消える。

メダカ : なるほど。でも、それってどんな意味が?

若 芽 : 実は、若芽にもそれはよくわからない。ソステヌートペダルなんて、使ったことないからな。

メダカ : 使わなくてもいいんですか?

若 芽 : はっきり言ってしまえば、使わなくてもいい。ただ、ドビュッシーの曲などで、低音の一つの音をずっと伸ばすように指示されている場合、ソステヌートペダルを使えば良い効果が得られるかもしれない。若芽は上手くいかなくて断念したけどさ。

メダカ : ということは、ソステヌートペダルを使う場合は、よく研究したほうが良さそうですね。

若 芽 : 各自、よく研究するように。(申し訳ないですが、このペダルのことは若芽に訊かれてもわからないので、質問は困ります。)

メダカ : で、先生、アップライトの真ん中のペダルは、どんな働きがあるんでしょうか。

若 芽 : アップライトの真ん中のヤツはミュートペダルとか言われているようだが、弦とハンマーの間にフェルトの布がカーテンのように下りてきて、音を非常に小さくすることができる。

メダカ : はあ? なんで、そんなに小さい音にする必要があるんです?

若 芽 : ピアノが消音型じゃない場合、夜中に練習したい時、音が大きいと困るだろ? だから、このペダルを踏んで練習するんだ。

メダカ : ああ、そうなんですか。

若 芽 : 消音型のピアノはこの真ん中のペダルで消音切り替えするようになっている。

メダカ : 見たところが同じように見えるのに、いろいろな働きがあるんですね。

若 芽 : ピアノも進化しているってことなんじゃないかな。さて、では、今日はここまで。

メダカ : 皆さん、今日のペダルについての説明は、ご理解いただけたでしょうか。次回は、いよいよペダルの踏み方です。では。さようなら。


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