ピアノのレッスン室 2.5


 手の形 その2 (手首の高さ)

メダカ : 若芽先生、今日はどんなお話でしょうか。

若 芽 : 手のフォームの続き。

メダカ : え? またですか? 

若 芽 : やっぱり、君はフォームについての認識が足りないようだな。

メダカ : そんなことありません。姿勢や手の形が大事なのはよくわかってますって。

若 芽 : (疑いのまなざし)じゃあ、そういうことにしておこう。

メダカ : 前回(レッスン室2)は姿勢と肘の位置と指の形についてやりましたね。今日は何についてですか? 

若 芽 : この前、手首を振って弾くのは良くない、ということを話したけど、弾いているうちに手首が下がってしまう人が多いので、そのことを考えてみようと思う。

メダカ : 手首の高さについて、ということですね。

若 芽 : そうだ。

メダカ : 弾いている時のことよりも前に、弾き始める時の手首の高さについて説明したほうがいいんじゃないでしょうか。

若 芽 : メダカ、君も時にはいいことを言うじゃないか。

メダカ : 時には、は余計です。

若 芽 : (無視)手を鍵盤の上に置いて構える時、一番高くすべきなのは指の付け根の関節だ。で、手首はそれよりは少し低くなるのが理想的だな。でも、指の付け根がへこまないなら、少しくらいなら手首が高くなってもいいと思う。

メダカ : 指の付け根がへこむというのは? 

若 芽 : 指が鍵盤を押さえている時に手首が高くなりすぎるとどうなるかな。

メダカ : ああ、指の付け根がへこんでしまいますね。

若 芽 : 付け根の関節がつぶれると指を動かすのに無駄な力がいるし、だいたい上手く動かなくなってしまうだろ? 

メダカ : ああ、そうですね。

若 芽 : このほかに、手の小さい人がオクターブをつかもうと手をいっぱいに開くと手首が上がってしまうことがある。オクターブをつかむ時に上からつかもうとしないで、鍵盤の横からつかむと手首を下げたままでも届くので、試してみるといいと思う。

メダカ : でも、下げすぎるのはダメですよね。

若 芽 : 当然だ。基本的には、手首は少し低めにして指の付け根の関節を高くして空気をたくさんつかむようにする。これは「ピアノのおけいこ」で中村紘子先生が…。

メダカ : それは、この間聞きましたからもういいです。今日はここまでですか? 

若 芽 : いや、ここからが本題だ。

メダカ : ああ、そうでした。弾いているうちに手首が下がってしまう場合の対策を考えるんでしたね。

若 芽 : 手首が下がってしまうのは、手首に力が入って雑巾を絞るみたいになるせいじゃないかと思うんだ。

メダカ : はあ? ぞうきん、ですか? 

若 芽 : 濡れたタオルでもいいぞ。

メダカ : そういう問題じゃないでしょう。

若 芽 : ピアノを弾きながら雑巾を絞れと言っているんじゃないぞ。

メダカ : そんなこと、当たり前じゃないですか。ピアノを弾きながら雑巾を絞れる人なんていませんよ! 

若 芽 : まあ、興奮しないで。

メダカ : 若芽先生が変なことを言うからです! 雑巾のことはもういいですから、続きをどうぞ。

若 芽 : 基本は力を入れないことなんだが、特に1の指(親指)と5の指(小指)の時に下がりやすいと思うので、この2本の指で弾く時に気を付けたらいいと思う。

メダカ : なるほど。

若 芽 : 親指で弾く時には、鍵盤と平行にするんじゃなくて、20度でも30度でもいいけど、角度を少し付けるようにする。

メダカ : 20度というのは鍵盤と指という2辺で作られる角の角度の話ですね? 三角定規みたいな。

若 芽 : ほかにどういう意味があるんだ? 20度と言っても、温度じゃないぞ。

メダカ : はいはい、わかってますって。鍵盤に親指の横側がべったりと付くのはダメ、ってことですね。

若 芽 : そう。

メダカ : 鍵盤の端(手前)の部分には触らないってことですね。

若 芽 : うん。親指をべたっと鍵盤に付けると手首が下がるから、そうならないように気を付けて弾けば、手首の高さはかなり改善されると思う。音階を弾く時に指をくぐらせるけど、その時も要注意だぞ。

メダカ : なるほど。で、小指はどうなんですか? 

若 芽 : 小指は細くて力がないので、音を出す時に指の力で弾かずに手首や肘の力で弾こうとする場合が多い。

メダカ : ああ、なるほど。小指を弾く時に手首を振るような感じになるわけですね。

若 芽 : いつもそうやって弾いていると、いつまで経っても小指に力がつかないから、ずっとそういう弾き方になってしまうだろ? 

メダカ : ていうことは、つまり、練習すればするほど変な癖が付いてしまうってことですか? マズイですよ、それは。

若 芽 : マズイから注意しているんだろ? その上、指に力がないと(特に子供の場合)、親指と同じように、小指でも指全体で鍵盤を弾くことが多くなる。

メダカ : 指を立てて弾く力がなくて指が寝てしまうから、そのままだんだん手首が下がってしまうんですね。ますますマズイじゃないですか。

若 芽 : だから、小指を弾く時にも手首に頼らずに、指を鍛えるようにしないな。

メダカ : そんなこと言っても、力がないから指も寝てしまうし、手首や肘に頼ってしまうわけでしょ? 

若 芽 : あまり強く弾かないことと、手首を下げないことを気を付けるんだな。メダカ、やってみなさい。

メダカ : こうですか? 

若 芽 : 手首を下げるな、と言ったんだゾ。肘や肩を上げてどうするんだ。

メダカ : でも、手首を上げると肘も肩も上がってしまいますが。

若 芽 : 君、オバケの手をやってみなさい。

メダカ : オバケの手って、これですか? (両手を胸の前に持ってきて、指先をダランと下げる。)オバケ〜〜。

若 芽 : その時に君の肘は手首より上にあるのか? 

メダカ : そんなわけないでしょう。

若 芽 : じゃあ、手首を上げても肘を上げる必要はないよな。

メダカ : あ、ホントだ。

若 芽 : 1週間や10日じゃあ、効果は出ないかもしれないが、1の指と5の指を弾く時に手首が下がらないように注意することで、だんだんと正しいフォームも身に付くし指も強くなるってわけだ。

メダカ : なるほど。手首の高さに気を付けるだけで、明るい未来が待っているんですね! 

若 芽 : はあ? (おおげさなヤツだな。)

メダカ : では、本日の勉強はこれでおしまいです。皆さん、手首が下がらないように気を付けてがんばりましょう。


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