ピアノのレッスン室 9


 レガートの弾き方

メダカ : 若芽先生、いよいよ「レガート」の勉強です。やっと「ピアノのレッスン室」らしくなりましたね。

若 芽 : あー? 今までだって、ずっと「ピアノのレッスン室」らしかったじゃないか。

メダカ : そうですかー? 

(若芽、横目でにらむ。)

メダカ : (ギクッ。) あ、いえ、そ、その通りでした。とっても「ピアノのレッスン室」らしかったです。とにかく、始めましょう。ね、先生。

若 芽 : よし、始めよう。

メダカ : ホッ。

若 芽 : メダカ、レガート (legato) に弾くというのはどういう風に弾くことかな? 

メダカ : 音をつなげて弾くことだと思いますが。

若 芽 : じゃあ、音と音が切れなければ、みんなレガートになるってことだな。

メダカ : ええ。

若 芽 : (ピアノの前にすわる。)メダカ、ちょっと聴いて。

メダカ : はあ。

若 芽 : (ポン、ポン、ポン…、と少し手首を振って弾く。)レガートだったか? 

メダカ : え? ええと、なんとなくレガートという感じじゃないです。 音はつながってましたけど。

(若芽、もう一度別の弾き方をする。)

メダカ : あ、それはレガートです。

若 芽 : どっちも音はつながっていただろ? 

メダカ : ええ。

若 芽 : でも、全然違って聞こえるだろ? 

メダカ : ええ。

若 芽 : ピアノの音は減衰する。

メダカ : はあ? ゲンスイって? 

若 芽 : 音が鳴った瞬間が一番強い音で、あとはどんどん弱くなるってこと。

メダカ : ああ、なんだ、そんなの、当たり前じゃないですか。

若 芽 : 歌は声を出してからでもクレッシェンド(だんだん強く)できるけど、ピアノは音を出したあとでいくらがんばっても、クレッシェンドはできない。つまり、歌とは発音(音を出すこと)の仕組みが違うってことだ。

メダカ : はあ、それが? 

若 芽 : だから、歌うようにレガートすることはできない。

メダカ : え? 先生、できないって、そりゃあないんじゃないですか? そんな断言しちゃったらマズイですよ。

若 芽 : だって、構造上無理なんだから仕方ないじゃないか。

メダカ : で、でも、なんかあるでしょ。できない、で終わりですか? 

若 芽 : 誰も終わりだなんて言ってないじゃないか。ピアノでレガートを表現するってことはどうやれば人間の耳を錯覚させられるかってことなんだ。

メダカ : 錯覚ですか? 

若 芽 : 錯覚だろ? ホントはできないのにできるように聞こえるんだからな。

メダカ : はあ。それで、じゃあ具体的にはどういう風にすれば、錯覚させられるんですか? 

若 芽 : 手の重さを鍵盤に載せる話は前にやったよな。

メダカ : ああ、「レッスン室5」の脱力のところでやりました。(まだお読みでない方はこちら

若 芽 : あの時に練習したように、まず一本の指先に手の重さを載せる。それから、別の指に歩くように移せばいい。つまり重心移動だな。

メダカ : ほう。

若 芽 : では、メダカ、やってみなさい。指はどれでもいいけど、今はいちばん安定している3の指(中指)にしよう。

メダカ : 弾く前に、力を抜いて手の重さを手首で支えるんでしたね。

若 芽 : そうそう。そして、音を出す時に、手首で支えている手の重さを(よくわからなければ手首の重さと思ってもいいが、)指先に移す。

メダカ : (3の指でミの音を出す。)指の先に乗った感じになるんですね。

若 芽 : うん。それでいいよ。で、今は3の指一本に乗っているけど、そのまま隣りの2の指(人差し指)も押さえる。あ、その時に3の指は上げないでそのままだよ。

メダカ : ええと、まず3でミを弾いて、そのあと3を押さえたまま2でレを弾くんですね。

若 芽 : 音はなんだっていいけどな。

メダカ : (2の指でレも弾く)これでいいですか? 

若 芽 : よしよし。さっき一本指にかかっていた手の重さが、2本の指に分散されただろ? 

メダカ : はい。2本指で手の重さを支えている感じです。

若 芽 : そしたら、3の指の力を抜く。3の指が浮いてきて、2の指に重心が移るよな。

メダカ : あ、ホントだ。

若 芽 : はじめに3の指に乗っていた重さが2の指に移る、その感覚を忘れないように。

メダカ : わかりました。

若 芽 : じゃあ、メダカ、今度は1の指から5の指まで重心移動してみて。

メダカ : はい、やってみます。

若 芽 : ほらほら、前にも注意したけど、1の指を弾く時に手首を下げると手の重さが1の指先に乗らないだろ? 

メダカ : そうでした。親指は少し斜めにするんでしたね。(ドを弾く。)

若 芽 : よしよし。1の指でド(何の音でもいいけど)を弾いたら1は押さえたまま2も重ねて弾く。重さが2本の指にかかったら1の指の力を抜く。すると、1の指が上がってきて2の指に重さが移る。で、次は、2の指はそのままで3の指を弾く。2と3の2本の指に重さが乗ったら、2の指を上げる。3の指に重さが移る。4を弾く。3を上げる。5を弾く。4を上げる。ほら、1の指に乗った重さが、5まで移っただろ?

メダカ : うーん。緊張してしまいましたよ。それに、音がちゃんと鳴りませんでした。

若 芽 : 別に音は出なくてもいいんだ。重心移動の練習の時は、ピアノを弾くのが目的じゃあなくて、重さをちゃんと移動させるのが目的だからな。

メダカ : なるほど。で、これっていったい何のための練習です? 

若 芽 : はあ? メダカ、今日のテーマは? 

メダカ : えっと、「レガートの弾き方」です。ああ、そうか。今のがレガートに弾く(なめらかに弾く)練習なんですね。

若 芽 : そう言っただろ? 「レガートに弾く」ということは手の重心をきちんと移動できるようにすることだと若芽は思っている。ちゃんと指先に重心を乗せていれば音も生き生きするし、歌う気持ちも指先から鍵盤に伝わるし、いいこと尽くしだ。

メダカ : なるほど、なるほど。では、皆さん、今日はここまでです。がんばってレガートの練習をしましょう。さようなら。


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およそ
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