音部記号
メダカ : 若芽先生、音符の話が一段落したと思ったら、今度は楽譜の話ですか?
若 芽 : 楽譜を正しく読むことは大事なことだゾ。
メダカ : そんなことはわかってますよ。でも、今日のテーマの「音部記号」っていうのは、ト音記号とかヘ音記号のことでしょう? そんなこと、ここを読んでいる皆さんは知ってますよ。
若 芽 : ああ、まあ、それはさ、若芽も考えたよ。でも、なにげなく使っている言葉までちゃんと説明する「ソルフェージュの教室」なんだ。
メダカ : はあ? まあ、先生が説明したいんなら、僕はいいですけど。
若 芽 : 音部記号というのは、楽譜にとっては非常に重要なものだ。
メダカ : そんなに重要ですか?
若 芽 : そりゃあ重要だろう。メダカ、もし、五線に音符だけ書いてあって、音部記号がなかったら読めるか?
メダカ : あ、そうですね。ト音記号で読めばいいのか、ヘ音記号で読めばいいのか、困ります。
若 芽 : だろ? だから、楽譜を見る時には、まず音部記号に注意することが必要だ。
メダカ : はい。
若 芽 : 音部記号といえば、いちばん有名なのはト音記号だ。メダカ、ト音記号が何の音を示すための記号かは、知っているだろうね?
メダカ : 真ん中のドがわかるように、ですよね?
若 芽 : (溜め息)
メダカ : え? 違うんですか?
若 芽 : 違うさ! それなら、なんでト音記号って言うんだ?
メダカ : え? もしかして、トの音、つまりソを示しているんですか?
若 芽 : 当たり前だ。ト音記号の書き始めのグルグルは、第2線を囲むようになっているだろ? つまり、第2線が、トの音(正確には一点ト、中央ドの5度上のソ)ですよ、と示しているんだよ。
メダカ : ほう、なるほど。
若 芽 : ト音記号っていうのは、もともとはGという文字だったんだのが、模様化されて、今のト音記号の形になったんだ。
メダカ : ああ、その話は、どこかで聞いたことがあります。へ音記号はFですよね。ということは、ヘ音記号はヘの音を示しているんですね。
若 芽 : そうだ。ヘ音記号は第4線から始まるだろ? 第4線がヘの音(中央ドの5度下のファ)ですよ、ってことなんだ。
メダカ : じゃあ、もしかして、別の位置にト音記号を書いたら、別の音をソだと宣言できるわけですか?
若 芽 : ピンポーン。昔は今のト音記号を3度下げた第1線を囲むように始まるヤツもあった。今は使われてないけど。だから、変なところからト音記号を書き始めると、別の音がソの音になっちゃうぞ。気をつけるように。
メダカ : 誰もそんなところまで見ませんよ。
若 芽 : なんか言ったか?
メダカ : いえ、なんでもありません。
若 芽 : さて、せっかく音部記号の話をしたので、ついでにハ音記号のことを少しだけ、説明しよう。
メダカ : ハ音記号、ですか? 聞いたこと、ないなあ。
若 芽 : ハ音記号というのは、ハの音(中央のド)を示す記号だということは、もうわかるよな。
メダカ : ええ、まあ。
若 芽 : ハ音記号で現在いちばんよく使われているのは、第3線がハを示すアルト記号だ。
メダカ : 若芽先生、ト音記号とヘ音記号で、ピアノの音域はすべてカバーできるのに、なんでハ音記号なんてものが必要なんですか?
若 芽 : ピアノの楽譜にはハ音記号は使わない(わかめの知る範囲では)。ハ音記号は主に、中央ハ音を中心とした音域を持つ単旋律楽器のために使われる(ヴィオラなど)。
メダカ : よくわかりませんが。
若 芽 : もし、ト音記号かヘ音記号で、中央ドの6度上のラと6度下のミを交互に書き表そうとしたら、どうする?
メダカ : 大譜表で書きます。
若 芽 : ピアノなら、それでいいけど、単旋律楽器は大譜表は使わないだろ? その時はどうすればいい?
メダカ : ト音記号に下線をいっぱい使って書きます。
若 芽 : ラは第2間に書いて、ミは下線を使って下第4間に書くってことだな?
メダカ : そうです。
若 芽 : ずいぶん、見にくくないか?
メダカ : そりゃあ、見にくいと思いますけど、ヘ音記号を使っても、ミはいいけどラはやっぱり下線をたくさん使わなきゃならないじゃないですか。
若 芽 : だから、ハ音記号(アルト記号)が必要になる。
メダカ : え?
若 芽 : 第3線を中央のドにすれば、今言ったラもミも下線を使わずに書けるだろう?
メダカ : ええと、第3線が中央のドだとすると、第1線はファ、第2線はラ、第3線はド(中央)、第4線はミ、第5線はソ、ですから、あ、本当だ。
若 芽 : ピアノだけ弾いている人には、あまり関係ないハ音記号なんだけど、こういうのもあるってことくらいは知っていてもいいだろう。
メダカ : 音部記号にもいろいろあるんですねえ。さて、今日はこれで終わりです。次回はたぶん、調号についての話になると思います。では、さようなら。
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