植物と硝酸態窒素とアンモニア態窒素、その吸収差異について 

2010年 5月 8日 .

        I n d e x
  • 前 書 き .
  • 窒素吸収
  • 植物と窒素吸収形態
  • アンモニア態窒素肥料の変化
  • NO−Nを含むイネ苗の発根力
  • 灌水と肥料流亡率
  • NO−NとNO−Nの成分比の差異が蔬菜の生育に及ぼす影響
  • NO−NとNO−Nの成分比の差異が蔬菜の要素含有量に及ぼす影響 
  • 水稲体内におけるNO−N → NO−Nの変化とモリブデンフラビン酵素(硝酸還元酵素)活性
  • 植物のイオン平衡吸収(礫耕栽培による実験例)
  • バラ栽培に硝安を追肥した場合の窒素吸収例
  • いちご栽培に硝酸態窒素で追肥した場合の窒素吸収例
  • ハウスみかんの土壌を分析した場合の窒素吸収例
  • 水稲栽培に硝酸態窒素を主にして追肥した場合の例


  • 前書き

     昔、テレビ動画で“ポパイ”というアニメ番組が放映されていた。私も少年時代に大変楽しませて貰った一人である。だから、時代的には相当古いアメリカ製のテレビアニメ番組である。その中のストーリーは色々あるのだが、最終シーンでポパイの恋人役のオリーブを腕ずくで奪おうとする悪役のブルートと戦い、ポパイは恋人と共に危機一発の状態となる。その時、ポパイはほうれん草の缶詰めを取り出し食べる。毎回こんなシーンとなっている。すると、突然怪力になってブルートを叩きのめしてしまう。そして、彼はオリーブとハッピーエンドとなる、と言う30分完結ストーリーである。

    私はこの時代、あの匂いの強いほうれん草のとりわけ根の部分を、鼻をつまみながら盛んに食べさせられた思い出がある。この時代のほうれん草の根は今と比べて格段に大きく、匂いも大変強かった。そして、そのようなほうれん草を食べさせられた理由には、それには大変な滋養があり、体に良いという理由からだ。現在の日本ではそのほうれん草には発癌性物質の硝酸態窒素が多く含まれる。その為にこのほうれん草が悪者のようになっている様だ。この説が本当なら、私はアメリカとその影響を受けた親にセッセと毒を盛られていた事になる。ところが病気になった記憶が無い、ましてや当時は肉類も少なく、ほとんど毎日の食卓が菜食だったのだが・・・・。

    ところが、現在のこの窒素悪玉説の日本と反して、欧米諸国での考え方はほうれん草だけでなく野菜はどんどん食した方が良いという見解である。それは野菜の栄養である無機質やビタミン・繊維質などを摂取することそのものが、その害になるであろうという窒素を摂取したとしても、これらの野菜は大量に食べたほうが健康的には良いというのが常識のようだ。

    フランスには医学者 J・リロンデルの著書で“硝酸塩は本当に危険か(崩れた有害仮説と真実)”という本(越野正義訳)がある。この本はそのような事柄を書したもので、例えば癌の原因が野菜に残留した硝酸態窒素によるものかどうかを論じ、また人参ジュースを飲んだ赤子やほ乳瓶をくわえて授乳した赤子達がチアノーゼを発し死亡に至った事件の原因が、世間で言われるように本当に硝酸塩によるものだったのかどうか、そのような原因が問題となった当時のその担当医としての立場からこの事実を正確に伝えようとして出版されたものである。

     今、日本では化学肥料としての窒素を使った栽培はかなり制限されようとしている。例えば、ある県に行くと化学肥料としての窒素の投与は許されるものの、その使用成分量は年間10kg/10aに制限されていると言う。反面、堆肥などの有機物から得た窒素成分なら無制限で良いという報告を受けている。堆肥などの窒素成分と化学合成した肥料の窒素成分とはどこがどう違うのか?この違いの根拠は全く良く理解しかねるが、堆肥を使った場合は特別栽培と称し、施設などの導入の際には補助金の対象になるという。

     植物はアミノ酸や蛋白質の素となる窒素源をどのようにして還元し、合成していくのか?その過程は窒素の硝化作用という項目で学んだ。それでは植物には、その窒素をアンモニア態窒素で与えるのが有利なのか、それとも硝酸態窒素で与えた方が有利なのか、色々と考えてみる必要はないのか、本当にアンモニア態窒素の施用で結論付けて良いのか?そのような疑問が思い浮かぶ。

    そこで、私はこのような疑問点、
    “このように現在の日本では厄介者扱いされようとしている窒素だが、作物によってはこの種の窒素を硝酸態で与えたが良いか、またはアンモニア態で与えたが良いのかどうか、考える必要があるのではないのだろうか”そのような事を考える。

     例えば稲や茶は好アンモニア態窒素作物と言われている。しかし、本当にこれらの作物にアンモニア態窒素を施す事が良いのだろうか???・・・・?そのような研究は今ではあまり耳にしないが、過去においては熱心に研究をされていた時期がある。特に、わが国の耕作地の約半分の面積は水田で占めている。この水田の稲作栽培にはもっと関係者は関心を示すべきである。

    この点では、我々の土壌の研究に大いに参考利用させて戴いた山崎伝博士の“微量要素と多量要素”の中には大変参考になる記述が多い。例えば、興味を引く記述に、水稲に対してこの窒素をアンモニア態窒素で与えて本当に良いのか?否、硝酸態窒素で与えるべきでないかと言うような研究資料である。

     3年ほど前から、我々も水稲において育苗床の段階から硝酸態窒素を中心に配合した液肥で育苗しているが、従来に比べて根の張りは大変良く、この疑問が解決出来そうな結果である。また、水田に田植えをする前段階の元肥では硝安を中心に窒素を与えているが、やはり生育が良い。更に、本田では溜まった水が自然減水すると、そのまま放置して地割れ寸前まで地干し、出来るだけ硝酸化成を進めるようにしている。

    つまり、硝酸態窒素をより多く吸収させようとしているのである。もし、この結果・研究が予想通りの結果だったとすれば、現稲作における施肥形態は根本から変わり、そしてその方法を導入する事によって生育そのものも良くなるわけだから農家は収量増となり、農家に手取りの増加をもたらす事となるだろう。

      << 参考 >>
     “微量要素と多量要素”の著者である山崎伝氏によると、この著書の中で日本における水稲の多収穫に成功した多くの農家の栽培方法を見ると、水稲に硝酸性の窒素を吸収させている可能性がある。例えば畑苗の使用、水稲生育中の間断灌がい、或いは田干し作業である、と記述がある(Page110.本文のまま)。


    窒素吸収

    植物は、どのような形態の窒素で吸収され生長をしていくのか?という研究は種々なされているが、
    一般的には、

    水稲関係ではアンモニア態窒素(NH−N)で、
    畑作関係では硝酸態窒素(NO−N)として吸収されるという論がなされている。

    これは、いわゆる好アンモニア態窒素植物(作物)、好硝酸態窒素植物(作物)と呼ぶ区別のことである。

    << 植物と窒素吸収形態 >>
    ・ 好アンモニア態窒素植物
     
     イネ      (単子葉、イネ科)
     クワイ     (単子葉、オモダカ科)
     アナナス    (単子葉、アナナス科)
     タコノ木    (単子葉、アダン科)
     チャ      (双子葉、ツバキ科)
     

    ・ 好硝酸態窒素植物
     
     ムギ類    (単子葉、イネ科)  栄養成長期   (NH4-N>NO3-N)
     生殖成長期   (NO3-N>NH4-N)
     タマネギ   (単子葉、ユリ科)  
     クワ      (双子葉、クワ科)  成育初期     (NH4-N>NO3-N)
     全  般     (NO3-N>NH4-N)
     キウリ、ヘチマ、カボチャ  (双子葉、ウリ科)  NH4-Nでは発根不良
     タバコ、トマト、バレイショ (双子葉、ナス科)  NO3-N>NH4-N
     花蕾形成期はNH4-Nで成育不良
     カンラン、カブ、カラシナ  (双子葉、アブラナ科)   
     ホウレンソウ、ビート     (双子葉、アカザ科)   
     エンドウ、ソラマメ     (双子葉、マメ科)   


    然しながら、イネ科に於いては表-1,2に見られるように水田の落水をすると、その水の減少過程の中でNH4-Nの硝酸化成は行われており、また、表-3のように水稲育苗の比較ではNO3-N(畑作における培養苗)がNH4-N(折衷苗代苗)に発根重、根数、発根率に於いて何れも勝っていることを示している。(分析は米澤農業研究所)


    表-1 (単位 mg/100g)
    (山崎 伝)
      落水直前(6月19日) 灌水直前(7月15日)
    土壌水分 100% 72%
    NH−N 42.8mg 6.2mg
    NO3-N 0 0.9mg


    表-2 イネ水落後 イチゴ定植前の水田( 於:香川県 ) 分析:1982年 9月
    単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
    酸度
    (pH) KCl
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P25)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    5.98 2.52 1.33 197.13 25.82 260.95 28.22 0.48
    6.67 2.01 0.46  99.66 26.93 347.94 27.21 0.65
    6.30 1.72 0.33 224.51 28.03 311.46 36.28 0.51
    6.60 2.73 0.53 183.44 28.03 289.01 24.19 1.00


     

    表-3 NO3-Nを含むイネ苗の発根力( 山崎 伝 )
    注:発根率 = 発根重 / 風乾重 の値
      風乾重葉
    1株mg
    全窒素
    %
    NH4
    mg %
    NO3
    mg %
    発根重
    mg %
    根 数
    1株mg
    発根率
    %
    NH4培養苗 288 3.19 11.6 微 量 32.7 22.0 11.4
    NO3培養苗 311 2.27 3.7 11.8 56.4 27.5 18.1


    << 疑問 >>

    @ 表-3表の生育状態から判断して、苗の時は好硝酸性だったのが、水田に植えた時点から好アンモニア性に特性が変わるのだろうか?という疑問。

    A NO3−Nは下の<< アンモニア態窒素肥料の変化 >>項のように水田では流亡・脱窒を生じて肥料としては不利であるというが、そのような理由でNH4−N系の肥料を使用しているとすれば、これは好アンモニア態窒素植物とは言えないのではないだろうか。

    B 自然の摂理として考えた場合、同じ科の作物が好アンモニア・好硝酸性とその基本的な特性が分かれるのだろうかという疑問。例えば、イネ科でのイネ(好アンモニア態)と芝及び麦(好硝酸態)、ツバキ科では茶(好アンモニア態)と椿(好硝酸態)など。


    << アンモニア態窒素肥料の変化 >>
    未発酵堆肥を入れてない


    表−4は、<< 疑問 >>Aの水田には“硝酸態窒素不利説”、大量の水または熱水をかけた場合どれ位の窒素成分が減るだろうかというテスト、灌水による肥料成分の流亡量である。@は水の抜けが大変良い条件のカーネーションベンチ栽培に於いて3.3cu当たり5トンの水をかけ流してみて、その前後で培地を分析し養分の流亡状態を確認したものである。

    A・Bは熱湯土壌消毒をした際、簡易法ではあるがその前後で分析をして比較した。

       
    表−4 @灌水と肥料流亡率
    分析者:米澤農業研究所
    単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
    分 析 日 pH
    (Kcl)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    53.01.07 A 5.78 9.41 47.36 721.02 63.58 462.99 49.39
    53.02.23 B 5.14 8.09 20.55 531.90 57.66 329.71 45.36
    流亡率(%)   14.02 56.61 26.23 9.31 28.79 8.16

     
    A灌水と肥料流亡率(熱湯500g/30aを散布)  場所:静岡県 (栽培作物は葉ネギ)
    ※ 水ではなく熱湯をかけた除塩の例 (分析はJAの簡易分析による)
    分析日
    酸度
    pH(H2O)
    アンモニア
    NH4-N
    硝酸
    NO3-N
    全りん酸
    P2O5
    置 換 性
    可給態
    Fe
    EC
    加里K2O
    石灰CaO
    苦土MgO
    '00.02.07(A)
    6.50
    0.00
    1.70
    513.00
    14.80
    564.00
    116.50
    ***
    0.87
    '00.04.26(B)
    7.10
    1.30
    1.00
    290.80
    51.30
    368.00
    113.30
    ***
    0.28
    流亡率(%)
     
    ????
    41.18
    43.31
    ????
    34.75
    2.75
    ***
    67.82

    B灌水と肥料流亡率(熱湯500g/30aを散布)  場所:愛知県(栽培作物は菊)
    ※ 水ではなく熱湯をかけた除塩の例 (分析はJAの簡易分析による)
    分析日
    酸度
    pH(H2O)
    アンモニア
    NH4-N
    硝酸
    NO3-N
    全りん酸
    P2O5
    置 換 性
    可給態
    Fe
    EC
    加里K2O
    石灰CaO
    苦土MgO
    '99.09(A)
    4.99
    6.05
    16.9
    233.00
    100.00
    451.00
    122.00
    ***
    1.08
     〃 (B)
    5.28
    6.75
    0.59
    180.00
    77.70
    309.00
    93.60
    ***
    0.29
    流亡率(%)
     
    ????
    96.50
    22.75
    22.33
    31.49
    23.28
    ***
    73.15


    また、チャが好アンモニア態窒素植物として区別されているのには疑問がある。緑茶の旨みの主体をなすものは、テアニンというグルタミン酸のエチルアミド誘導体( γ-Gultamyl-ethyl-amide )が多量に含まれているからである。このテアニンというアミノ酸は今まで、このチャ以外の作物ではマッシュルームの一種にしか含有されていないことが分かっており、チャ特有の成分である。

    テアニンは根から過剰に吸収されたNH4ーNを取り込み、自らNH4ーNの分解作用を営むと同時に自己増殖も行うというような作用をも行う。また、テアニンはNH4-N:NO3−Nが10:0の比率からNO3が増加するに従って茶葉中の含有量が減少していくことが知られている。チャの品質向上のためにはNH4−Nを過剰に施肥する必要があり、正確にはテアニンによるNH4ーN分解作用を有しているので耐アンモニア態窒素植物と称すべきである。

    畑作物中トマト、インゲン、カブ、タマナ等では図-1~2に見るようにNH4-Nが増加するに従って、地上部、根部ともに重量が減少している。
    図-3では特にNH4-Nが増加するに従って、細胞分裂に必須の石灰、苦土の含有量が減少している。
    図-4、5では硝安と硫安による生育の比が見られるが、NO3-Nが24mg/乾土100g(≒kg/10a)で葉部、根部ともに最良を示している。


    NO3-N:NH4-Nの差異が蔬菜の生育に及ぼす影響 (砂耕栽培 M.IWATA 1953年)

      図-1 地上部の新鮮重
    地上部の新鮮重。NH4-Nが増加するに従って、地上部、根部ともに重量が減少している。
        図-2 根部の新鮮重
    根部の新鮮重。NH4-Nが増加するに従って、地上部、根部ともに重量が減少している。



    NO3-N:NH4-Nの差異が蔬菜の要素含有量に及ぼす影響 (砂耕栽培 M.IWATA 1953年)

       図-3 地上部
    地上部はNH4-Nが増加するに従って、細胞分裂に必須の石灰、苦土の含有量が減少している。
         図-4 葉部
    葉部は硝安と硫安による生育の比が見られるが、NO3-Nが24mg/乾土100g(≒kg/10a)で葉部、根部ともに最良を示している。


       図-5 地上部
    地上部は硝安と硫安による生育の比が見られるが、NO3-Nが24mg/乾土100g(≒kg/10a)で葉部、根部ともに最良を示している。
     



       水稲体内におけるNO3-N → NO2-Nの変化とモリブデンフラビン酵素(硝酸還元酵素)活性
    (発芽3週間後、春日井氏水耕液 室温30℃ SHIBATA他 1969年)

       図-6 地上部
         図-7 葉部



    処が、畑作では明らかにNH4-NよりもNO3-Nの施肥が植物の成長に良好な影響を与えているにも関わらず、表-5を見ても日本農家の肥料購入量(一戸当りの平均)では硝酸系の肥料が全く見当たらない。


           
     表-5 日本における農家1戸当りの肥料の平均購入量(1975年)  単位kg(肥料要覧 1980年版)
     硫  安 49.1
     尿  素 34.3
     塩  安 7.6
     石灰窒素 24.5
     複合(高成分粒状) 801.2
     複合(低成分粒状) 178.2
     複合(低成分粒状) 56.6
     固形肥料 17.7


    昭和53(1978)年度の農林水産省「作物統計」によっても作付延面積は稲2,548(全作物中の47.0%)、麦218.8、いも類193.1、豆類249.1、野菜553.6、果樹337.0、工芸作物(たばこ・茶・サトウキビなど)371.5、飼肥料作物951.3(各々×1,000ha)であり、稲を除くとその作付延面積は2,873.9(全作物中の53.0%)に及ぶので、水田が多い為に硝酸系の肥料が不必要であると言う理由は適当とは言えない

    欧米に於ける畑作では、必ず全窒素中の70%は硝酸態窒素を使用する事を原則としている。

    これを、表-6の日本の窒素肥料の生産と表-7の世界における窒素肥料の生産で見ると、硫安+尿素と全窒素の比は、日本では61.6%であるのに対し、米の生産が多いイタリアが55.6%、それ以外は全て50%以下であり、特に西独、アメリカ、ノルウェー、オーストリアの順に20%を下廻っている。


    表-6 日本の窒素肥料の生産(1978年)   (単位トン) (肥料要覧 1980年版)
    窒素肥料合計 4,303,257
    硫  安 1,897,355
    尿  素 1,516,235
    硝  安 25,707
    硝酸石灰 434(輸入4,438)


    表-7 世界における窒素肥料の生産   (単位:千トン) (肥料要覧 1980年版)
      A
    硫  安
    B
    尿 素
    A+B C
    窒素合計
    (%)
    (A+B)/C
    備 考
    日   本 384 324 708 1,149 61.6  
    東 ド イ ツ 165 0 165 776 21.2  
    西 ド イ ツ 240 0 240 1,290 18.6  
    イ タ リ ヤ 235 313 548 985 55.6  
    オ ラ ン ダ 121 342 463 1,154 40.1 1976年
    ベ ル ギ ー 130 0 130 610 21.3 1976年
    ノルウェー 0 12 12 337 3.5  
    ポーランド 64 436 530 1,548 34.2  
    ア メ リ カ 489 850 1,339 9,790 13.6  
    オーストリア 0 2 2 226 0.8  


    以上の数値は生産量であり、輸入および輸出は含んでいない。生産量をそのまま国内消費量として考えるのは適当でないが、大略の雛勢は推定できるであろう。

    特に注目すべきは、ノルウェーでは国内メーカーのノルスク・ヒドロ社が一社で、その当時ノルウェー硝石と呼ばれる硝酸石灰(商品名:ノルチッソ)を年間700千トン生産している。これをNO3-Nとして換算するならば、成分14.7%、つまりこの一社で硝酸態窒素を102,9千トン生産している事になる。尚、この表ではノルウェーのNO3-N系の肥料の生産数量は掲示されていないが、硫安は製造していないので尿素以外(337-12=325)の何%かはNO3-N系の肥料であろうと思われる。

    また、表-6の日本のNO3-N系(硝安+硝酸石灰)肥料は合計で26,241トンにすぎず、全窒素肥料の0.6%である。
    このことについて、日本ではNO3-N系肥料の畑作での特質(その必要性)が営農指導指針として明確にされていないこと。そのため、需要の予測が付かず、生産に踏み切れないのではないかと考えられる。各々の農家が都度調達している硝酸石灰の輸入量が桁違いに多いのは、そのことを物語っていると考えても良いのではないかと思われる。


    表-8は1968年に米澤農業研究所がキウリの礫耕栽培における
    (1) NO3-N系
    (2)NH4-N+(NH2)2CO系
    (3)(NH2)2CO系

    の各肥料を使って、キウリの生育比較試験を行った事例を掲げた。
    結果は(1)のNO3-N系肥料を除いて、38日目と31日目にそれぞれ完全萎凋し、その後枯死に至った。


     表-8 植物のイオン平衡吸収(礫耕栽培による実験例) <<米澤農業研究所 1968.6>>
      肥 料 塩 (g/トン) 成   分 Total-N=10として
    (1)
    (園試処方=標準養液)
    硝酸加里 810
    硝酸石灰 950
    硫酸苦土 500
    リン酸1アンモン 155
    NH4+-N 18.9
    NO3--N 224.7
    P205- 95.6
    K2O+ 377.5
    CaO+2 224.2
    MgO+2 82.0
    SO4-2 64
    0.78
    9.24
    3.92
    15.49
    9.20
    3.36
    2.62
    (2)
    硫安 90
    尿素 530
    硫酸加里 750
    熔リン 500
    炭酸石灰 140
    NH4+-N 19.1
    (NH2)2+-N 247.5
    P2O5- 95.0
    K2O+ 405.8
    CaO+2 228.4
    MgO+2 90.0
    SO4-2 398.8
    0.71
    9.28
    3.56
    15.22
    8.56
    3.37
    14.95
    (3)
    尿素 530
    塩化加里 200
    硫酸加里 580
    正リン酸 155
    塩化石灰 750
    硫酸苦土 500
    N源はすべて尿素
    (NH22+-N 247.5
    P2O5- 112.3
    K2O+ 440.1
    CaO+2 287.3
    MgO+2 82.0
    SO4-2 460.7
    Cl- 456.6
     
    10.00
    4.53
    17.78
    11.60
    3.31
    18.61
    18.44


    (1)の肥料設計
    肥料名
     肥 料 成 分 率 
     
    肥料量
    (g)
     肥 料 成 分 量 (g) 
    NO3-N
    (NH4-N)
    P2O5
    K2O
    CaO
    MgO
    NO3-N
    (NH4-N)
    P2O5
    K2O
    CaO
    MgO
    硝酸加里
    硝酸石灰
    硫酸苦土
    リン酸1アンモン
    0.139
    0.118

    (0.122)



    0.617
    0.466




    0.236




    0.164

    810
    950
    500
    155
    112.6
    112.1

    (18.9)



    95.6
    377.5




    224.2




    82

     
     
     
     
     
     
    243.6
    95.6
    377.5
    224.2
    82

    (2)の肥料設計
    肥料名
     肥 料 成 分 率 
     
    肥料量
    (g)
     肥 料 成 分 量 (g) 
    NH4-N
    (NH2-N)
    P2O5
    K2O
    CaO
    MgO
    NH4-N
    (NH2-N)
    P2O5
    K2O
    CaO
    MgO
    硫 安
    尿 素
    硫酸加里
    熔リン
    炭酸石灰
    0.212
    (0.467)




    0.190


    0.541



    0.300
    0.530



    0.180
    90
    530
    750
    500
    140
    19.1
    (247.5)
     
     



    95


    405.8



    150
      78.4



    90
     
     
     
     
     
     
    266.6
    95
    405.8
    228.4
    90

    (3)の肥料設計
    肥料名
    肥 料 成 分 率
     
    肥料量
    (g)
    肥 料 成 分 量 (g)
    NH2-N
    P2O5
    K2O
    CaO
    MgO
    NH2-N
    P2O5
    K2O
    CaO
    MgO
    尿 素
    塩化加里
    硫酸加里
    正リン酸
    塩化石灰
    硫酸苦土
    0.467




    0.724

    0.632
    0.541




    0.383





    0.164
    530
    200
    580
    155
    750
    500
    247.5




    112.3

    126.4
    313.8




    287.3





    82
     
     
     
     
     
     
    247.5
    112.3
    440.2
    287.3
    82


    この実証試験に使ったキュウリは3例とも“久留米長日落合F1”を使って行った。各々本葉10枚までは標準養液にて生育させ、その後、培養液を上表-8に示した(1)(2)(3)液に交換して実験を開始した。 また、栽培ベッドには水耕栽培と礫耕栽培を混用したような設備を作り、1ベット各々20株を植え付けた。

    結果、(2)・(3)例では根が褐色になった上、萎凋し、その後回復しないまますべて枯死してしまった。この間、養分の分析は一度も行わなかったが、極端な萎凋の状態が回復しなくなった時点で分析をした(表-9)。

    表-9 不具合時の養液分析 (米澤農業研究所)
      分 析(植付日から) NH4+-N (NH22+-N
    (2) 8日目 3.0me 5.1me
    (3) 31日目 6.1me 痕  跡

    表-10では、米澤農業研究所がバラ栽培における硝安の追肥についての例を掲げている。
    この農家は初年度(S56年)に堆肥を過剰投与(約10トン/10a)したためアンモニアの害を大発生させた土壌の例である。翌年、この土壌を分析しながら窒素成分の追肥に硝安を用いながらその変化を観察した。

    その有機物がたっぷりと投与された圃場では、アンモニア態窒素が硝酸態窒素に素早く変わり、理想的な窒素の構成となっている。このように、硝安中のNH4-Nの大部分が硝酸化成菌の働きにより硝酸化され、土壌のpHは安定していると言う事実に注意をして戴きたい。ここで生産されたバラは岡山県の花卉市場に出荷され、その市場で高い評価を受けているという報告があった。

    表-10 バラ栽培に硝安を追肥した場合の窒素吸収例(作物:温室バラ  於:香川県)
    単位mg/乾土100g(≒kg/10a)
    分 析 日
    肥料投入量
    酸度
    (pH:Kcl)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    追 肥
    標準値 6.0~6.2 2~3 20 50 50 320 30 2.70  
    '82.04.03 6.25 1.22 7.33 246.42 46.68 210.45 35.28 0.07  
    30 kg
    30 kg
    240 kg
    20 g
      5.10 5.10  
    16.23


    127.20
     


    2.70
    硝 安
    硫酸加里
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値 6.25 6.32 12.43 246.42 62.91 337.65 35.28 2.77  
    '82.05.09 6.58 0.50 10.93 284.75 55.13 303.04 24.19 0.07  
    30 kg
    20 g
      5.10 5.10          
    2.70
    硝 安
    微量要素
    修正値   5.60 16.03 284.75 55.13 303.04 24.19 2.77  
    '82.06.11 6.10 1.44 12.67 240.94 51.96 195.01 34.27 0.08  
    20 kg
    260 kg
    20 g
      3.40 3.40    
    137.80
     

    2.70
    硝 安
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値   4.84 16.07 240.94 51.96 332.81 34.27 2.78  
    '82.08.02 6.48 2.16 14.74 238.20 57.24 333.91 37.29 0.05  
    20 g               2.70 微量要素
    修正値   2.19 14.74 238.20 57.24 333.91 37.29 2.75  
    '82.10.04 6.24 0.79 8.67 156.06 35.75 188.00 37.29 0.00  
    30 kg
    50 Kg
    300 kg
    20 g
      5.10 5.10  
    27.05


    159.00
     


    2.70
    硝 安
    硫酸加里
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値   5.89 13.77 156.06 62.80 347.00 37.29 2.70  
    '82.11.05 6.22 0.57 8.80 190.56 39.06 216.06 42.33 0.00  
    30 Kg
    40 kg
    200 Kg
    20 g
      5.10 5.10  
    21.64


    106.00
     


    2.70
    硝 安
    硫酸加里
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値   5.67 13.90 190.56 60.70 322.06 42.33 2.70  
    (分析者:米澤農業研究所)
    この当時の標準窒素全量は20kgとして設計している。

    硝安は次回の分析の時までには確実に吸収されている。しかしながら、その吸収量は花卉類での窒素及び他の養分に於いて、例えば、苺やトマトのような持ち出し量の多い作物類に比べると数段に少ない(花卉類は持ち出し重量が少ない)。

    次に、前年度この農家は堆肥を入れすぎた為に散々な結果だったが、この年はその有機物としての堆肥を硝酸化成菌が糧として猛烈に活性化し始める。この活性化した硝酸化成菌が作り出す消化作用は、更により多くの硝酸態窒素を作り、その為その圃場の土壌pHはより安定(弱酸性化)する。この中性付近の弱酸性が更に硝酸化成菌を活性化させ、この硝酸化成に好循環をもたらす事となる。(硝酸化成菌は硝酸存在下でpH中性近くになるに従い活性化は増大する)

    表-11ではS.55年、米澤農業研究所とJA及び生産者の3者で土壌分析をしながら苺(宝交早生)の栽培を行った。その際、窒素分の追肥として硝酸態窒素を主にして行った例である。栽培後半には生産者が体調を壊して入院する事となり、収穫が増加する時期に肥培管理が上手く出来なかった。それでも23.5aを栽培してその平均で5,200kg/10aの収穫があったということなので、それなりのデータとなっているのではないかと思われる。

    表-11 いちご栽培に硝酸態窒素で追肥した場合の窒素吸収例(作物:ハウスいちご)        分析者:米澤農業研究所
    単位mg/乾土100g(≒kg/10a)
    分 析 日
    肥料投入量
    酸度
    (pH:Kcl)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    追 肥
    標準値 6.0~6.2 2~3 20 50 50 320 30 2.70  
    '80. 9. 2 5.95 1.25 0.20 189.71 15.64 204.84 26.21    
    180 kg
    55 Kg
    270 kg
    70 kg
    20 g
      12.60   12.60 12.60
    29.76


    143.10



    14.00




    2.70
    いちご配合
    硫酸加里
    炭酸石灰
    塩化苦土
    微量要素
    修正値   13.85 0.20 203.31 58.00 347.94 40.21 2.70  
    '80. 9.28                  
    5 kg   0.85 0.85           硝 安
    修正値  分析をしないで硝安5kgを1,000倍にて1回だけ灌水する。定植は9月21日
    '80.10.25 5.77 3.60 1.40 99.55 32.19 211.85 32.26    
    40 kg
    10 kg
    25 kg
    53 kg
    185 kg
    30 g
      2.80
    1.70

    0.42

    1.70

    7.79
    2.80 2.80

    13.53



    14.04
    95.40



    0.26





    4.05
    いちご配合
    硝 安
    硫酸加里
    硝酸石灰
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値   8.52 10.89 102.05 48.52 320.29 32.52 4.05  
    '80.11.11 6.38 1.58 2.66 184.39 30.23 241.31 28.08 0.09  
    20 kg
    40 kg
    40 kg
    200 kg
    40 kg
    30 g
      3.40

    0.32
    3.40

    5.88
     
    21.64


    10.60
    106.00
    21.20


    0.20

    4.00





    4.05
    硝 安
    硫酸加里
    硝酸石灰
    炭酸石灰
    苦土石灰
    微量要素
    修正値   5.30 11.94 184.39 51.87 379.11 32.28 4.14  
    '80.12.12 6.55 2.01 1.46 160.75 45.62 244.12 32.25 0.00  
    10 kg
    20 kg
    80 kg
    100 kg
    20 g
      2.55

    0.64
    2.55
    2.78
    11.76
     
    9.32


    21.20
    53.00


    0.40




    2.70
    硝 安
    硝酸加里
    硝酸石灰
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値   5.20 18.55 150.75 54.94 318.32 32.65 2.70  
    '81. 1.13 6.63 3.24 4.00 184.39 40.16 256.74 37.29 0.00  
    10 kg
    30 kg
    55 kg
      1.70

    0.44
    1.70
    4.17
    8.08
     
    13.98


    14.57


    0.27
      硝 安
    硝酸加里
    硝酸石灰
    修正値   5.38 17.95 184.39 54.14 271.31 37.56    
    '81. 3. 9 5.72 2.23 4.20 198.28 25.82 228.68 31.24 0.11  
    10 kg
    30 kg
    50 kg
    100 kg
    30 g
      1.70

    0.40
    1.70
    4.17
    7.35
     
    13.98


    13.25
    53.00


    0.25




    4.05
    硝 安
    硝酸加里
    硝酸石灰
    炭酸石灰
    微量要素
    修正値   4.33 17.42 198.28 39.80 294.93 31.49 4.16  
    この当時の標準窒素全量は約20kgとして設計している。

     硝安は、毎回確実に吸収されているのが良く理解できる。特に、収穫時期を迎えると、その吸収量は漸次増加している。収穫量の増加に比例して、その吸収量が増加するこの時こそしっかりと土壌分析をしてその監視をすることが極めて重要である。

     次に、データ上の問題点は石灰量の施肥量(赤字の数字部分)がこの重要時期の12月、1月、3月でありながら、石灰の修正が300kgを下回っている。この期間には施肥効率の良い硝酸石灰や硝酸加里を使用して施肥を効率的に考えているものの、ここは肥料の効果を持続するためにも遅効性の炭酸石灰・苦土石灰を多用し、数値として350kgまで投与する必要があった。

    また、収穫増加時期である2~4月には確実に土壌分析をしてより的確な施肥をすべきであったと思われる。栽培途中のいちごの出来具合については糖度が常に12%はあり(微量要素とその窒素還元効果)、出荷先の市場では品質的にも全く問題なく、高い評価を得ていた。


     表-12では、ハウスみかんの土壌を分析したデータに基づいて窒素の追肥量(吸収量)を検証してみた。この当時('77年)の窒素の標準量は10kgとしていたが、それでは窒素量がすぐに不足するというので'82年には一端その標準値を20kgと変更、更に30kgと修正しながら現在に至っている。従って、この硝酸値を30kgとした場合、この数値は更に増加した数値で表されるものと思われる。

    このデータは月に一度の土壌分析をしていたが、余りにも石灰の吸収量が多いため分析の期間を15日に変更し、その吸収量を追跡したものである。

    表-12 ハウスみかん栽培に硝酸態窒素で追肥した場合の窒素吸収例(於:福岡県前原市 T農園)分析者:米澤農業研究所
    当時は10kgを標準していた。
    単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
      分 析 日 酸度
    (pH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    1977年度の栽培 標準値 6.0~6.2 2~3 10 50 50 320 30 2.7
    '77. 2.12 6.12 0.09 0.70 14.78 22.25 279.16 31.24  
    〃 2.26 6.02 0.54 1.40 16.55 30.38 252.50 44.34  
    〃 3.13 5.40 0.49 0.53 5.91 17.27 133.29 35.28  
    〃 3.25 5.86 1.08 2.13 26.60 37.35 227.29 44.35 0.288
    〃 4.10 5.32 0.65 1.00 57.92 33.86 158.54 46.37 0.070
    〃 4.24 5.63 1.03 3.34 23.64 34.72 211.85 43.34 0.107
    〃 5. 9 5.58 1.09 5.47 23.64 33.86 202.03 49.39 0.252
    〃 5.22 5.95 2.35 6.14 29.55 37.43 279.20 54.43 0.363
    〃 6. 5 5.62 0.96 12.41 28.37 36.86 258.15 51.41 0.324
    〃 6.21 5.69 1.48 9.14 46.09 43.47 296.03 50.40 0.654
    〃 7. 7 5.42 1.09 11.67 34.28 43.47 241.32 49.39 0.036
    〃 7.18 6.14 1.09 16.68 24.82 33.55 315.67 62.49 0
    この期間に追肥した窒素量(吸収量) 39.17 39.17  (5ヶ月間に使用した硝安の量は約230kg)
    1978年度の栽培 標準値 6.0~6.2 2~3 10 50 50 320 30 2.7
    '77.11.22 6.00 5.15 3.34 29.55 40.16 267.97 43.85 0.108
    '78. 1.29 5.80 2.72 0.80 30.73 46.69 235.70 32.26 0.070
    2.12 5.93 1.25 1.67 48.46 41.27 294.63 30.24 0.078
    2.28 6.40 2.65 9.47 66.19 50.49 417.39 33.77 0.258
    3.12 6.23 9.93 4.00 39.59 42.80 318.48 28.22 0.078
    4. 2 6.07 3.68 6.14 60.28 50.91 352.15 30.24 0.092
    5.22 6.28 4.63 10.67 59.10 61.47 354.96 28.22 0.092
    この期間に追肥した窒素量(吸収量) 13.62 13.62  (6ヶ月間に使用した硝安の量は約80kg)
    1979年度 標準値 6.0〜6.2 2~3 10 50 50 320 30 2.7
    '78.10.18 6.27 4.49 5.67 63.83 57.24 499.47 46.37  
    '79. 1.20 6.48 0.96 3.87 86.88 45.63 430.72 48.38 0.042

    表-13では、好アンモニア態窒素の代表的な作物と言われている水稲に硝酸態窒素を多く含んだ肥料の硝安を主体にして元肥として与えた場合、どのような作になるかテストを兼ねて作付けしてみた。但し、いきなりこのような試験栽培と言う具合にはいかないので、第一ステップとしてイネの箱育苗に養液栽培用の肥料(アンモニア態窒素の含有は8.41%)を使って追肥を繰り返し、その生育具合を充分に確認した。

    結果、非常に根張りの良い苗が出来たので、これは好硝酸性窒素作物と考えても良いのではないかと考え、次のステップに進む事にした。試験栽培の第二段階として、初年度(2008年)は土壌に存在するだろうと思われる養分を予想した上、予めJAが設計したものに不足しているだろうと思われる成分を追加し、窒素分として硝安を主に元肥設計を行った。

    '08年、'09年の2年間の作柄は収量・味覚共に申し分なく、特に'09年は同管内は平均不作といわれたなか、前年よりも収量は多かったと報告を受けている。但し、しっかりしたデータと写真がないのが悔やまれる。

    2010年度はさらにデータを充実させたいと思っている。

    表-13 水稲栽培に硝酸態窒素を主にして追肥した場合の例(於:長野県)         分析者:中隈水質土壌分析室
    単位mg/乾土100g(≒kg/10a)
    分 析 日
    肥料投入量
    酸度
    (pH:Kcl)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (p2O5
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    珪素
    (Si)
    塩素
    (Cl)
    標準値 6.0~6.2 2~3 30 50 50 320 30   10
    '08年 残予想     5.0 100.0 20.0 150.2 20.0    
    40 kg
    40 kg
    100 kg

    JAの設計
    4.0 8.0 7.2
    8.0


    30.0

    1.2

    12.0
    30.0
    BBコシ
    珪酸加里
    珪酸石灰
    60 kg
    30 kg
    200 kg
    100 kg
    上記に追加 10.2 10.2  
    16.2


    106.0
    53.0



    10.0
      硝 安
    硫酸加里
    炭酸石灰
    苦土石灰
    修正値(予想)   29.4 108.0 51.4 339.2 31.2 42.0  
    '09年 残予想     5.0 100.0 20.0 200.0 20.0    
    60 kg
    67 kg
    133 kg
    200 kg
    67 kg
      10.2 10.2  
    36.2


    39.9
    106.0
    35.5




    6.7


    39.9
    硝 安
    硫酸加里
    珪酸石灰
    炭酸石灰
    苦土石灰
    修正値(予想)   10.2 15.2 100.0 56.2 381.4 26.7 39.9  
    '10. 4.30 5.8 0.1 6.2 40.0 66.2 369.3 29.8   5.0
    20 kg
    60 kg
    17 kg
    100 kg
      5.2
    10.2
    2.0

    10.2


    10.5
     


    30.0
     


    30.0
    塩化アンモン
    硝 安
    燐1アンモン
    珪酸石灰
    修正値   17.5 16.4 50.5 66.2 399.3 29.8   18.2
    栽培の大まかな留意点は、微量要素などの高価な栄養素を使うので引込み用水は無駄に水路に流出さないという作業が基本になる。そのためには、引込んだ水は一端堰き止め湛水する。その後、アンモニア態窒素の硝化作用が進むよう落水し、土壌を乾かし、田干しの状態を保ちながらひび割れが発生しそうな時点で再び用水を流し込むといったやり方を繰り返す。その他の管理は従来通りに行う。

    本圃では追肥が困難な為、石灰その他の多量要素は元肥の時、ほぼ極限量まで施肥しておく。特に石灰は収穫量を大きく左右するので、2010年度は400kgとしている。



     = 完 = 




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