「第九」解釈      


「第九」理解と解釈   

 「第九」大好きな私たちですが、ベートーヴェンはここで何を訴えたのでしょうか? 
決して幸福な人生を送ったとは言えそうもないベートーヴェン・・・・。
より一層「第九」大好きになるために「第九」の歌詞とその背景をさらに理解して
歌いたいものだと思います。

その参考となるものをここに掲載していくこととしたい。

@ 第九の歌詞と音楽
   http://www.kanzaki.com/music/lvb-sym9f.html
   
A 第4楽章の設計図  「第九 歓喜のカンタビーレ」潟lット武蔵野発行より抜粋
  第4楽章は、大きく6つの部分に分けることができる
  1. 序奏部
   大不協和音による「恐怖のファンファーレ」で始まるオーケストラだけの部分、
  楽器による「計画変更」の言い訳・チェロとコントラバスによるレチタティーヴオ
   (ナレ―ション・・・とりあえずこれまでの楽章は、なかったことにと・・・)
  2. 第1部
   <喜びの歌>が声で登場
  ようやく本題に入った感じ。「歓喜の力」は「人間愛」
   (ひと休み・・・ティンパニ謎のディミヌエンド)
  3. 第2部
   トルコマーチ(トライアングル・シンバル・大太鼓など打楽器)
   テナ―のソロと男性合唱  
  4. 第3部 
   もう一度<喜びの歌>を全員で歌うと、トロンボーンの先導で男性合唱が
   「抱き会おう ! 千万の人々よ ! この口づけを全世界に !」と歌う
  5. 第4部
   神秘的な部分を経て、<喜びの歌>と「抱き会おう !」が同時進行する「フーガ」
   弦楽器群が恐ろしく難しい音型を引かされる箇所
   (一瞬静かになって)
  6. 第5部
   最後にもう一度、独唱者が歌い、楽章全体の集結部(コーダ)をなす
   最後は<喜びの歌>により、熱狂的な幕切れを迎える・・・・

B 「第九」でベートーヴェンが言いたかったことは ?  (前Aと同著作より一部抜粋)
  Deine Zauber binden wieder, あなたの魔法の力は再び結びつける
   Was die Mode streng geteilt, 世の中の時流が厳しく分け隔てていたものを
   Alle Menschen werden Bruder, 全てのひとは兄弟になるのだ
   Wo dein sanfter Flugel weilt. あなたのその柔らかな翼が憩うところで
      (注.ここでDeineとdein 「あなたの」は「Freude 歓喜」を示す)
   ベートーヴェンは、身分社会を解消し、人類の自由と平等をもたらすのは「歓喜」の力であると結論づけたのだ・・・・

Cサントリー「1万人の第九」ホームページから借用  「一万人の第九」HP
<<演奏上の注意点(有元の解釈)>>
第1部>「8つの変奏曲」
・257小節〜264小節…言葉のビート(2分音符単位)を感じながら、歌詞のリズム唱、母音唱、歌詞唱。こ
の部分は、ソロの最後の所を、共感を持って再現している。オクターブユニゾン。
・284小節〜292小節…言葉のビート(4分音符単位)を感じながら、歌詞のリズム唱、母音唱、歌詞唱。こ
の部分は、魂の共感と共に始まり、269小節の「nie(〜ない)」の言葉によって、否定されたものは、この場
から立ち去るがよい・・・と「der stehle」の上に有る「dim.」は、急に弱くするのではなく、「der stehle」の3
拍を使って弱くして行き、涙ながらに立ち去るがよいと「p」で納める。
・313小節〜330小節…言葉のビート(8分音符単位)を感じながら、歌詞のリズム唱、母音唱、歌詞唱。こ
の部分は、細かい律動で興奮状態も最高に達して、天使ケルビムが神の前に立つ所でクライマックスを迎
える。そして、321小節からの、重い門の扉を叩くようなスタッカートの付いた2分音符のビートに変わる。最
後に長い(佐渡さんの場合は、とても長いので途中でカンニングブレスをして下さい)フェルマータの付いた
全音符で締めくくられる。
・411小節〜431小節…男声合唱の部分。「freudig」で喜びに満ちて歌い上げ、「Held」を英雄のように、そ
して「Siegen」を勝利に満ちて、格好良く決めて下さい。
・543小節〜590小節…最も有名な「歓喜の歌」の部分です。歌詞のリズム唱、母音唱、歌詞唱をしました。
この部分は8分の6拍子の8分音符単位で、オーケストラがビートを刻んでいます。合唱団が歌う付点四分
音符が、3つ分のビートを持っている事を感じてもらう為に、ピアニストに左手だけの伴奏をずっとしてもらい
ました。漫然と歌うのではなく、心の中からわき出してくる喜びの鼓動を全世界の人々に歌い上げるべく、
第4楽章最初の92小節のコントラバスとチェロの主題の提示からはじまった「8つの変奏曲」で出来た「第1
部」を締めくくって下さい。

<第2部>
・595小節〜602小節…ドドシソ、ララソミ、ファファミド、ララソという、ヘンデルの古い形のコラール風の第2
主題を男声のユニゾンで歌い上げる、ここでもベートーヴェンの工夫が読める。596小節の「Millione」の始
まりをシンコペーションする事だけで、単純な旋律に変化を持たせているばかりでなく、「Millione」に広がり
さえも持たせている。
・603小節〜610小節…主旋律がソプラノに移動。全体に広がりが生まれる。この部分で印象的な響きは
606小節のアルトの「シ」と607小節でのソプラノの「ド」との半音の響きが有る。それに注意しないといけな
いのはこの部分のオーケストラは裏拍からのスラーによって、拍のビートが消えて、ビートは合唱に任されて
いるという点です。ビートをしっかりと作って行きましょう。
・611小節〜618小節…オーケストラと男声合唱の完璧なユニゾンです。バスは音域がかなり高いので、あ
まり高すぎると思う人は、無理をしないでテナーに任せてみることも、勇気有る決断です。617小節の
「Vater」はがなり立てないで歌って下さい。
・619小節〜626小節…先程のユニゾンがハーモニーを伴って現れます。特に622小節からのバス→テナー
とアルト→ソプラノへと受け継がれる「muss」(ムースの三段活用)私が勝手に命名。をシッカリ強調!!
・631小節〜646小節…この部分はハーモニーで造り上げられています。632小節の「nieder」の丸い音に
よる響きは深くもぐり頭を地に押し付けんばかりです。633小節の「millionen」で上に向き上がり、635小節
の「Ahnest」の響きは短三和音(ソシ♭レ)ですが、発音を明るくする事によって、創造主があなたの前に現
れる予感を感じさせるものになっています。そして「Welt」で全世界に呼びかけ、同じハ長調のドミソの和音
で「Such'」をPPで探し求め、Sternenzeltで天の上に創造主を見いだす!!
・650小節〜654小節…このラド♯ミソの和音を一緒に歌い出すと単純になってしまうのですが、1小節遅れ
て男声が歌う事で天の扉の前を覆っている霧のように複雑に響きます。

<第3部>
<1>「二重フーガ」(合唱の醍醐味が味わえる部分)
2つのテーマが折り重なる事によって、複雑に入り組んだ構造
(あくまでも私の解釈ですので、楽しく覚える為に使って下さい。他の人に話さないで下さいね。笑)
・655小節〜662小節…SopとAltそれぞれのテーマがしっかりと歌われます。
・662小節〜671小節…AltからTen、SopからBassにテーマが受け継がれる、
SopはBasの応援、AltはTenに寄り添うようにハモル。
・671小節〜678小節…TenからBassへBassからTenにテーマが受け継がれる。
AltはTenの応援、SopはBassのオブリガート。
・678小節〜686小節…BassからSopへ、そしてTenからAltへテーマが受け継がれる。
TenはAltの応援、BassはSopのオブリガート。683からTenが佐渡おけさを。
・687小節〜692小節…SopとBassは終止しようとカデンツァに入ります。Altはtenの真似して、佐渡おけ
さ。
・692小節〜700小節…Tenの佐渡おけさの中、突然、Altが裏切って、もう一度最初から歌い始めます。慌
てたSopは「Tochter」を間違えて「wir betreten」と歌い出してしまい、歌詞が足らなくなる。
・700小節〜708小節…慌てたSopはテーマが高く上がれない。bassが「シ」の音で、助けると復活して
「seid」を高く歌い上げる。
・709小節〜716小節…この部分で、オーケストラの低音がうなり声をあげます。SopとTenが終わろうとして
終止形になる。AltとBassは違う歌詞だが、リズムが一緒になって行き、ハモリます。
・716小節〜719小節…Sopのder ganzen Weltとファンファーレ、Tenがお尻を持って支える。
・719小節〜729小節…ここでAltとBassでテーマを三たび歌い上げる。
・730小節〜745小節…神秘的に歌われる部分、Tenはクレシェンドしない。
・745小節〜762小節…合唱讃歌。豊かに響かせて下さい。最後は天に昇って行くように。

<2>ソリストと合唱の共演
・763小節〜794小節…地上に降りて来て、ソリストがお互いに語り合い、歌いあっている。
・795小節〜803小節…大阪名物究極の横入り(流れている車に気付かれないようにいつの間にやら入っ
ている)のように、ソリストが作ってくれた所にそろっと入って来て、最後に良い所をかっさらって行く。クレシ
ェンドの仕方は、795の「Deine Zauber」は響かさないで言葉だけで小さく入って、796の「Deine Zauber」
で響きを加えて、797の「binden wieder」でもう少し強く歌って、799の「binden wieder」で、シッカリ強く歌
って、801小節のフォルテで爆発する。
・806小節〜809小節…「Alle」のタイを外して練習すると、無茶苦茶簡単になるから、しっかりとリズムを理
解してから、タイを付けて歌いましょう。入る所は「ティンパニ」の「タタタン」が合図です。
・810小節〜814小節…811小節の「Bruder」に向けて、全ての人々は兄弟になるという思いを込めて包み
込むようなクレシェンドで歌う。そして、「sanfter」は優しく軽く舞う羽根のようにピアノで歌う。
・818小節〜832小節…818小節の和音に注意して響かせる(特に属7の和音の7の音になるアルトのソは
難しいのでしっかり音を取る)832小節の「Menschen」は潔く格好よくソリストに譲る。

<3>フィナーレ
・855小節〜最後まで…この部分は最後のストレッタの部分でお祭り騒ぎのように。
・860〜863にかけて伸ばした後の864の「Bruder」の入りが遅れないように。
・865のソプラノとテナーのお祭り騒ぎに水を差すようにアルトは2分音符で諭すように、バスは4分音符でガ
ミガミ云って、アルトとのラとソの音のぶつかりを楽しみましょう。
・872のソプラノのシはスリムにして上から歌う。
・917の「Elysium」のアルト、テナー、バスの作った和音の羽根布団の上にソプラノはフワッと乗る感じで楽
園を表現する。・920の終わりはきっぱりと終わる。