創立30周年記念 講演会&シンポジウム 報告

家族の「かたち」が激変

 認知症の人と家族の会島根県支部発足30周年記念講演会とシンポジウムが10月2日、出雲市今市町の出雲市役所くにびきホールで開催され、市民約80人が参加、活発な討議でこれからの家族の会の活動を展望しました。
 島根県健康福祉部高齢者福祉課の田中郁子課長と家族の会本部理事村上敬子氏から30周年の祝辞をいただき、堀江徳四郎代表世話人が挨拶をし、講演会に入りました。
 「認知症の人が地域で暮らしていくためには」を共通テーマに、認知症の人と家族の会の副代表理事・勝田登志子氏が基調講演。これを受け、県支部顧問で松江市の釜瀬クリニック院長・釜瀬春隆氏、同ことぶき福祉会理事長・槻谷和夫氏、県健康福祉部高齢者福祉課在宅サービスグループリーダー・渡邊利恵氏、堀江徳四郎の4人をパネリストに勝田氏の司会でシンポジウムが展開されました。このなかで印象的だったのは、男性介護者が増えてきたように、この30年で家族の「かたち」が大きく変わってきたこと。会場からも同感の声が寄せられました。また、社会の認知症への理解は進んだものの、個人としては認知症になりたくない、家族の認知症を隠したいというマイナスイメージはなくなっていない、との声も共通していました。

来年の介護保険改正を注視  勝田登志子氏が講演

 家族の会を代表して厚生労働省の委員などを務める勝田さんは、介護保険制度について「だんだん使いづらくなってきたとよく聞く」と前置き、2005年にホテルコストという問題が持ち込まれ、2009年には介護認定のための調査項目を減らしたために認知症の認定が軽くなる混乱も起こし、結局もとの形になるなど大きな動きがあったと紹介。この間に「痴呆」から「認知症」に呼称が変更となり、家族の会の活動も「要望書」の提出が「提案型」に変わり国の財政についても考慮し、「中福祉中負担」から「高福祉応分の負担」へと転換、介護認定の必要の有無を検討した結果「廃止」を打ち出し論議を巻き起こしてきたことを振り返りました。
 この30年で4人の同居家族が70%強から22.6%に、男性介護者は8.2%から32.2%に、若年認知症も増えているなど家族の「かたち」が大きく変わってきたなかで、住み慣れた地域でどう暮らしていったらいいのか。その地域が人口密集地なら、過疎地ならどうか、と問題を提起しました。
 来年行われる介護保険制度の大改正について、市町村格差が広がりはしないかとの懸念を示し、介護保険は①誰もが②必要なサービスを受けられ③お金の心配もいらない権利を保障すべきだと強調しました。

認知症への偏見 まだまだある  パネルディスカッションで討議

 勝田氏をコーディネータに4人のパネリストで進められたシンポジウムも「認知症の人が地域で暮らしていくためには」をテーマに話し合われました。以下はシンポジストの意見と聴衆の発言です。
 △認知症について諸制度が完備されてきたとはいえ、まだまだ社会に理解されていない△本人の心が理解されていない△介護保険ができて24時間ヘルプができなくなった△特養入所が増えた△お金がない人が利用しにくい制度だ△優秀なケアマネもいるがそうでない人もいる△ケアプランを1人に委ねるのではなく、集団として決定していく仕組みを△患者を在宅で地域で見守れ△訪問看護ができるような仕組みを△認知症の早期発見や周辺症状の悪化に気づき、ケアマネや地域包括支援センターにつながる情報共有の場を△県西部は看護師など人材が不足△地域コミュニティーハウスを作れ△看護学生にすら認知症へのマイナスイメージがある△高齢者、1人世帯が増えるなかでの介護認定は、家族がいることを前提にしており現状に合わない△男性介助者が家族会に出るようになった△地域に1人でも前向きの人がいれば地域は変わる・・・など。

認知症対策は県の施策の柱

 講演に先立ち島根県健康福祉部高齢者福祉課の田中郁子課長が挨拶。認知症対策は施策の大きな柱と位置づけ総合的に進めており、一昨年「認知症対策検討委員会」を設置したことを報告。
 昨秋には「認知症コールセンター」を家族の会県支部に委託、今年9月1日には島根大学医学部附属病院内に「認知症疾患医療センター」を開設しました。その他、認知症サポート医も養成中である。第5期介護保険事業支援計画を策定中で、取り組みに当たっては家族の会の意見も聞きながら進めたいと話しました。

30周年祝賀のレセプション

 講演とシンポジウムの後、30周年祝賀のレセプションを開きました。これまで「家族の会」を強く支えていただいた出雲社会福祉協議会渡部英二会長から祝辞と、これまでのともに歩まれた道を回顧されました。
 勝田・村上両氏の他、次の方々の出席をえました。島根大学医学部山口修平教授、出雲エスポアール高橋幸男先生、家族の会顧問釜瀬春隆・深田倍行両先生、金山孝治弁護士、認知症医療疾患センター小池節子氏、出雲保健福祉部佐藤茂氏、出雲社会福祉協議会新宮直行氏。