2012年 アルツハイマーデー記念講演会

2012年10月7日(日) (浜田市いわみ~る)

講 演 「認知症診療とケアの今とこれから」
 片山 禎夫先生

家族の会本部理事・若年期認知症専門委員長
川崎医科大学神経内科特任准教授
岡山県認知症疾患医療センター副センター長

写真 介護をおこなっていく上で、最初に認知症の理解が重要であることは当然です。片山先生のお話しも認知症の解説から始まっていきます。しかし、医療の対象としての認知症ではなく、本人と家族の立場に立ってのお話しであることが感じられるのです。

 お話しの最後に「認知症は人々の中に笑顔が生まれ新しい絆を生み出す病気なのです」と締めくくられたのですが、ここで私達は気付かされるのでした。認知症と認知症の人を負の対象としてしか見なかったことを。「何ができにくいのか、解りにくいのか、ストレスと感じているのかを知って、お互いに共に楽しむこと。失敗を、注意しないで、指摘しないで、教えないで、一緒に喜んでください。」

 認知症の人は不安と闘っているのでいつも頑張ろうとしています。その中で記憶障害があったとしても、情動的な記憶は決して失われることはない。だからこそ「してあげる」介助でなく、自信と誇りを傷つけない周りの人々の言葉と態度が大切であると強調されるのでした。だからこそ家族と地域を含めた仲間作りこそ大切だと言われるのでした。

認知症地域交流会 (島根県社会福祉協議会保持事業)

講演 「認知症の発見は初期に」
     講 師 深 田 倍 行 先生

写真 知夫村での「認知症地域交流会」が9月23日、同村役場のいきいきセンターで開催され、村民37人が参加し認知症への理解を深めました。

 堀江徳四郎県支部長の挨拶のあと、家族の会顧問で島根県認知症サポート医の深田倍行先生が「認知症発見は初期に」と題し講演しました。

 認知症とは記憶障害を主とするものであるが、実はそれを本人が自覚した時、それを周りから指摘された時、不安と心配が生まれそこから行動心理症状(PBSD)が現れ心理症状と行動症状が現れ、そして社会や生活の上で困ったことと認識されるのである。

 こうして「できなくなった」ことで起こる失敗から生まれる不安や焦りの心があることを理解することが大切ではないか。こうしたことは決して複雑な問題ではない。よく聞いてよく見てあげれば対応できることは沢山あることを理解して欲しいと強調した。この後も認知症の人の心の姿の説明は続くのであるが、認知症の人が便秘したとき下剤を使うと、家族が困ることなど日々の診療経験から介護の現実に具体的に言及した。

 認知症の人の心に沿うケアを訴え、気分を和らげるためには薬物より非薬物がよい場合もあり、笑顔の効用を例示しました。さらに近年、認知症の進行を遅らせる薬も各種開発されており「正確な診断による治療」を訴えました。

 今回の事業は松江地区会が主管しており、同地区会の役員である宮廻嘉奈子さんと石田百代さんがレジュメを配布して体験発表。宮廻さんは同居した姑について、物忘れから徘徊といろいろな症状を看たこと、続いて隠岐の実家に住む両親の介護のため松江から海を越え通ったことを振り返りました。石田さんは義母の在宅が困難になりやむなく施設入所、独居で頑張っていた実母も別の施設入所になり、現在は2施設に通って介護していますが、介護できることは幸せだと締めくくりました。

 次いで地元の介護家族2人を迎え、松江地区会の木谷節夫地区長も加わった3人、村民福祉課の小濱清人課長はじめ行政側4人とで懇談。2人とも、普段の介護の悩みやつらさを初めて第3者に明かしたといわれました。交流会参加後のアンケートでは「最新の治療・検査を知り有意義だった」「予防(進行を遅らせる)の励行を痛感」などの感想の一方、「心身のゆとりがないと笑顔は難しい」との率直な声もありました。講演、体験発表とも家族の会の活動が有意義であることに触れましたが、参加者のほとんどが会の存在を知らず、会のPRをもっと進めるべきだと感じました。