☆寄稿  何気ない第三者の言葉が・・・・・

 主人の両親は93歳88歳と長命で、現在要介護2で二人とも認知症を患っている。母は障がい高齢者自立度A2で歩行器がなければ5メートル以上の歩行はできず、歩行以外の日常生活は父が母の足となり動いてくれている。

 その父は、長年詩吟を趣味としており続けられる間は続けたら良いという気持ちでいたが、私の入院でその間老人保健施設で過ごした為、3か月に渡り詩吟の会を休み自然退会となってしまった。

 その退会ついては、自宅に帰った父が詩吟の仲間から大会があることを聞き、昇段試験があると思い背広を着て迎えを待っていた為、詩吟の代表の方に連絡した時に始めて知った。

 詩吟のことでは、練習曜日が他の方の都合で変わったことで、認知症のある父はなかなか覚えきれずに、今までの曜日にいそいそと出かけて行き「誰もいなかった」と肩を落としている姿があった。いろんな方がいろいろと伝えると父が混乱することを伝えた。

 代表の方は何を勘違いされたのか、詩吟に行くのを反対していると思われたらしく「優しくしてあげたらどう」「もう少しでしょうが(父が亡くなるまで)」と言われ、心すれすれの線で過ごしている私にとって許せない一言となった。

 私が認知症高齢者の方を対象とする仕事をしていた為、後に両親の状況をその方に伝えることができたが、多くの介護者は一方的な発言に憤慨しても泣き寝入りの状態であったと思う。

 私共の両親のように一見普通に見える認知症の場合は、特に第三者には理解し難く傍で何かと世話をしている家族への風当たりはかなり強いものがあって、介護家族としてはストレスの上位を占めていることが、この一件で実感できた。

 代表の方には、一般論として介護家族の心理について第三者の善意の言葉が時には介護家族の心を深く傷つける事があることを伝え、認知症を正しく理解してもらう為に、認知症サポーター養成講座を受けてもらうようお願いした。

 サポーター養成講座については、早速、開催してもらい、感謝の報告と労いの言葉を頂いた。認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続ける為には地域の理解が欠かせないが、認知症の軽度から中度の周辺症状のない認知症の方の理解までには程遠い状況であり、これからも介護家族及びキャラバンメイトの立場から、認知症本人はもとより介護家族の理解についてお願していきたいと思っている。(M S)